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2018年01月09日13:04

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読書紹介1696・「見当たり捜査官」

●「見当たり捜査官」 戸梶圭太著 双葉社 10年版 1600円
 警視庁に「見当たり捜査官」という職人技の刑事がいると聞いていたので、興味をそそられて読んだ本。「見当たり捜査官」とは、指名手配犯を見つけ逮捕する刑事のこと。チームを組まず、単独で街中を眺め指名手配犯を見つけるという特殊技能者である。
 本書では、久米山という30代後半の刑事(かっては警視総監賞を受けたことがある)が、見つけた犯人に手錠をかけたのに逃げられたり、誤認逮捕したり、乱闘で重傷を負ったりと失敗ばかりして、引退を考えるまでのスランプに陥る。父親(長崎県警の警察官)は、「見当たり捜査官」なるものを認めず、久米山に通常の警察官の仕事を望み、険悪の仲となっている。
 そんな久米山は、自宅に帰ると指名手配犯の写真ファイル(犯歴等は手書きで書く)を見ながら、1人々々との逮捕時のシュミレーション(かける言葉等)を行うのが日課だ。勤務時は、歩道橋の上で1日中立って歩く人々を俯瞰して眺めているため、通報され職務質問を受けたりする。犯人の立ち寄りそうないかがわしい場所に出入りしたりと、完全に外見が不審者なのである。友達も恋人もいないので、人と話すことも滅多にない。
 しかし、見当たり中にある生理現象が起きる。犯人を見つけると、センサーが反応して脳に電気が流れるのだ。そこで、犯人の存在を認知する。ここから、その犯人との幾度となく繰り返したシュミレーションどおりに声をかける、という訳。
 そんな久米山にも友達が出来た。殺人未遂犯で見当たり逮捕しようと声をかけたら、「3日前に時効となった」と落ち着いて言うのだ。彼は、未亡人の愛人になっていた。買ってもらったデジカメ(ロイカ)で路上写真家として、久米山と同じように街中を俯瞰して眺めて歩いていたのだ。彼は、正当防衛を信じてもらえないので逃げたと。そんな彼に、久米山は愚痴や悩みを話すようになっていた。
 こんな、「見当たり捜査官」の悲哀を描いた本。何の役にも立たないが、可笑しかった。

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