mixiユーザー(id:2810648)

2017年02月12日17:52

215 view

読書紹介1613・「悪党重源(ちょうげん)ーー中世を創った男」

●「悪党重源(ちょうげん)ーー中世を創った男」 高橋直樹著 文芸春秋 10年版 1571円
 奈良の大仏が造像(建立)されて400年後、平安時代末期に灰塵に帰した奈良の地で、焼け落ちた大仏再建を託された大勧進の僧・重源は61歳になっていた。時はまさに源平合戦の最中であtぅた。
 焼け溶けた大仏を下見した重源は、「大仏の鋳造に3年、大仏殿の建立にさらに10年、他の緒堂緒門の建立にさらに10年」と請け負ったのである。これは、半年前に検分した鋳物師たちが「大仏再建のこと、人力の及ぶ所に非ず」とうなだれたのとは大違いであった。しかも大勧進とは、資金から人夫、技術者まで全てを請け負う人物のことであったのだ。
 ということで本書では、重源が17歳で父を失い、異母兄との相続争いで母を殺され、兄の屋敷を襲って客人であった源氏の嫡流を誤って殺して、以後の逃亡生活の末に奴隷として買われて、四国の寺の悪党僧侶のもとで成長していく姿が描かれる。
 重源の東大寺再建事業は、まず道路港湾の改修による交通網整備から始められる。これは、産業育成や新たな生産地と消費地とを結ぶものであった。それら全てのことは、四国の師僧のもとで身につけたものであったが、師僧の弟子たちはその師僧とその家族を殺して財産を奪って逃亡したのだ。
 重源はその後、金山の発掘や港湾整備などの仕事をしながら、訳あって2度の渡宋を果たし、宋の最新の技術を身につけてきたのであった。
 本書では、生きるために犯してきた悪党の数々と、ピンチを切り抜ける知恵の数々によって成長していく重源の姿を追うことによって、平安末期の地獄のような様相を彷彿させていくのであった。その中で、大勧進となり大仏再建の事業を興すことが、重源の再生そのものであったことを描いていくのでありました。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年02月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728