読書紹介1576・「スタンド・バイ・ミー」　

●「スタンド・バイ・ミー」　小路幸也著　集英社　08年版　1500円
　東京バンドワゴンのシリーズ３。明治から続く下町の古本屋を舞台にした人情本。今回は、古本屋の心意気を、３代目堀田勘一（80歳）の孫・青の嫁すずみが京都で示してくる話がのっている。
　京都の古本屋の集いに勘一の代理として参加したすずみは、稀覯本を見せられ「値付け」をしろ、と言われる。すずみの付けた値は、12万円であった。この稀覯本は贋物、という判定をしたからである。これに対して京都の古本店主たちは、280万円だとしてすずみの見立てを酷評したのだ。
　しかしここで、すずみは古本の寄って立つ位置と古本屋の心意気を江戸弁でまくし立てることに。啖呵を切られた古本店主たちは、頭を下げたのだ。実はこの稀覯本は、京都の古本店主たち皆で、技術を継承する目的も含めて作り上げたニセ物だった、という話。
　その他、小学生の恋の話や18歳も年の差のある男女の恋の話。それぞれ、それにまつわる障害を堀田家の面々が解決していく物語でありました。