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2016年08月24日13:16

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読書紹介1569・「散華ーー紫式部の生涯 上」 

●「散華ーー紫式部の生涯 上」 杉本苑子著 中央公論社 97年版
 杉本苑子全集16。上巻は、紫式部(小市)の幼年期から20代後半まで。まだ宮中への出仕も物語(源氏物語)も書いていない、10世紀後半の時。小市の父は、藤原氏の傍系の中級官吏。派閥同士の権力の消長に影響されて生きる以外になく、抵抗の手段は封じられていた。
 時代は、膨れ上がった皇族が臣下へと下り(皇胤源氏や平氏)、はやくから受領層に落ちて諸国の守を歴任し、そのあいだにあこぎな領民泣かせでうんとこさ、私服を肥やした。その私服を護るために、家の子郎党を武装させ、武力を養った。あげく、溜めこんだ財力にものをいわせ、賄賂攻勢で権門に取り入って、ふたたび中央の官界に返り咲こうとしていた。いわゆる武者が出現しはじめ、権門(摂関家)の走狗となっていったのだ。
 上巻では、藤原摂関家(北家)の他族との権料闘争、それが終わると同族(兄弟間)での権力闘争が描かれ、ついに藤原道長が台頭してくる姿が描かれる。
 そんな中、学問の家系である小市の家では、弟に家系を継がせるべく学業を授けるが、隣りで聞いている小市の方がメキメキと才覚を現わしてしまう。ある時、「蜻蛉日記」(藤原摂関家の長・兼家の妻の1人の著)を読んだ小市は、自分も物語を書きたいと思うようになる。
 10代の半ばを越えても、家に引籠って書物ばかり読んでいる小市には、男が言い寄る気配さえない。ところが、父と同じ受領層の親戚である藤原宣考からの恋文が小市の許に届けられる。30代の宣考には通う女が多く、その1人からは小市と1つしか違わない男の子さえいたのだ。又、その文も悪筆で歌も不出来であることから、小市は見向きもしなかった。
 ところが宣考は、それから10年以上も諦めずに小市を追い続けた。父の新たな赴任先である越前国府に同道したのは、いいかげんな宣考から離れるためでもあったが、雪深い越前で小市は、宣考への想いに気づいてしまった・・・。という物語。下巻が楽しみ。

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