●「カシュガルの道」 スザンヌ・キョインソン著 西村書店 16年版 1500円
カシュガルという名があったので、手にした本。どうも、外国の小説は描写が分りづらく苦手である。しかし。1923年当時のカシュガルの様子が知れた本であった。カシュガルは、中央アジアのシルクロードの通り道である。本書は、1923年のカシュガルと、現在の英国ロンドンを相互に描きながらすすんでいく。
1923年のカシュガルには、「忠実なる女性信者たちの使節団」の代表ということで、キリスト教布教のためイスラム教の辺境の地に向かった女性布教団のことが描かれる。冒頭でこの布教団は、カシュガルの砂漠で10代の女性が子供を産む場面に遭遇する。女性は女の子を産んで死んでしまうのだ。
女の子をとりあげた布教団だったが、現地の役人に「人殺し」として捕えられる。役人に賄賂を送って解放してもらおうと、上部団体に「金を送って」と要請するが、断られてしまう。結局、布教団の責任者は死刑となるが、1923年の主人公マリアは、赤ん坊を連れてロンドンに帰還することができるのだ。ここでは、布教団の責任者のキリスト教原理主義的な頑なさ(狂気)に対して、マリアが反発する姿が描かれていた。
一方、現在のロンドンである。主人公のフリーダ(女性)を通じて、人種問題が描かれる。長い出張から帰った彼女のアパートには、役所からの不思議な通知が届いていた。住民死亡届課長の名で、「アイリーン・ガイ」の死亡とそのアパート内の遺品を完全に撤去するようにとの通達であった。役所は既に、葬儀は終えたというのである。
フリーダは、アイリーン・ガイなる親族に覚えがなかった。こうして、アイリーン・ガイなる人物の追跡と、通知のあった公営住宅に足を運ぶフリーダ。やがて、子供の時に別れた母を捜しあてたフリーダは、アイリーン・ガイが誰であるかを知らされる。それは、カシュガルで孤児となった女の子、その人であった。という物語。
キリスト教徒というのは、吃驚するような企画(原理主義的な)をたてるものだと、思ったものでした。
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