●「黄金(きん)の烏」 阿部智里著 文言春秋 14年版 1500円
八咫烏シリーズ3。本書では、八咫烏が支配する世界「山内」に、飲むと人形に戻れななくなる麻薬が横行したこと。人(八咫烏)を喰らう大猿が山内の結界を破って現れたこと。八咫烏は、常時は人形で暮らしている。鳥形になるのは卑しいこととして、貴族の中には一生人形でいる者もいるくらいだ。庶民で常時鳥形になるのは、馬となった者たちや罪人たちであった。
人形は、人間を前提にしているが、それは「山内」の外の世界にいる者で、山内に入ることは出来ない。金烏とは、この八咫烏の長である。本書の主人公若宮は、「真の金烏」と神官から認められ、兄宮を差し置いて金烏となった。この「真の金烏」が生まれた時代には、必ず山内に災厄が訪れる、という言い伝えがあった。しかし本当は、災厄が起こる時、それに対処するために生まれるのが真の金烏なのであった。今、その山内が綻び始めているのだ。人喰い大猿の出現は、その現れの1つだったのである。
ということで、本書では垂氷郷郷長の次男・雪哉と若宮の冒険活劇が描かれる。その中で、「真の金烏」とは何であるかが明らかになるのでありました。
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