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2015年03月24日17:07

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読書紹介1387・「恍惚病棟」

●「恍惚病棟」 山田正紀著 祥伝社 92年版 1500円
 ある大学病院の老人病棟の痴呆患者が相次いで死亡する。1人は病死で、1人は事故として片付けられた。主人公の美穂は、大学で心理学を学びながらアルバイト(心理士のアシスタント)としてこの病棟で働いている。
 彼女は7人の患者を担当していて、そのグループを「テレホンクラブ」と称している。玩具の電話で、昔の仲間(家族や恋人)と会話をするというアイデアだった。このアイデアで、少なからず痴呆が改善される効果がでて、美穂は嬉しかった。その矢先、担当する2人の老人が死んで、美穂のショックは大きかった。しかし、2人の死には不可解な点が幾つもあった。そこで、美穂がそのミステリーの解明に動きだすという物語。
 本書では、90年当時としては新しい脳科学の新発見が幾つも紹介されている。定説だった「いったん失われた脳のニューロン細胞は回復しない」が、痴呆老人の失われたコリン系ニューロンを回復できる可能性が明らかになったことなどだ。
 本書では、この研究に取り組んでいる教授が、その研究資金を企業から内密に受け、秘密の研究をしていたのだ。その実験体として、美穂が担当している老人たちがされていた、という物語。
 今でこそ老人痴呆問題はテレビでも頻繁に報道されるようになっているが、90年当時にこの問題を取り上げていることに、山田氏の先見性を感じたのでありました。

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