●「パーソナル 上・下」 リー・チャイルド著 講談社文庫 18年版 各920円
ジャック・リーチャー・シリーズ9。2014年のアメリカ・フランス・イギリス。リーチャーは54歳となる。フランス大統領の狙撃未遂事件が報道される。ライフルによる長距離射撃の試みだった。カルフォルニアでバスに乗っていたリーチャーは、読み捨てられた「アーミー・タイムズ」を読んだ。そこの広告欄に「ジャック・リーチャー、リック・シュメイカーに電話せよ」と短く印刷されていた。
トム・オデイ将軍が出したものだ。シュメイカー准将には、昔世話になった恩義がある。電話すると、直ちに車が差し向けられた。車は近くの空港に行き、そこからオデイ将軍のいる基地へとリーチャーを運んだ。
オデイとシュメイカーが話した内容とは、パリでの狙撃事件のことだった。リーチャーに、「パリに行け」というのだ。狙撃は、1300�辰竜�離から行われた。防弾ガラスに小さな罅が入っただけだった。その距離から命中させられる者は、世界で4人に絞られた。
ロシア軍元兵士ダトセフ、英国軍元兵士カーソン、イスラエル軍元兵士ローザン、そして米特殊部隊元兵士コットである。しかしコットは16年前に殺人事件を起こし、リーチャーによって逮捕されていた。そのことを云うと、コットの刑期は15年で1年前に釈放されていたと。刑務所でヨガと瞑想にふけり、狙撃手としての能力を高めていたと。
リーチャーが命じられたこととは、潜伏中のスナイパーたちを捜し出すこと。身分は民間人のままであった。リーチャーには、相棒がつけられた。CIAから国務省に出向させられていたナイス（28）という女性である。そのナイスは、オデイがリーチャーのことを「シャーロック・ホームレス」と呼んでいたと。
ナイスと共にコットが釈放後に住んでいた住居に向かう。その地でリーチャーがまずしたことは、射撃練習の地を探すことだった。それは、あった。1500�辰竜�離から射撃練習は行われていた。家に入ると、寝室にリーチャーの写真を等身大に拡大コピーした的が作られていた。そこには、コットがいかにリーチャーを憎んでいたかが窺えた。そのコットに、莫大な金を使ってライフルを買い与え、1万発以上の弾丸を与え、パリまで秘密裡に運んだ者がいる。
パリに飛んだリーチャーたちは、狙撃場所を検分した。そこには、ロシア諜報機関のケンキン、英国諜報機関のベネットが同席した。この時点で、イスラエルのローザンにはアリバイが証明されていた。残るは3人である。
3人が並んで狙撃場所から大統領の演説場を見ていた時、リーチャーの隣のケンキンが狙撃され頭が吹っ飛んだ。リーチャーは風上にいて、その瞬間に突風が吹いた。狙いはリーチャーだった。パリでの狙撃は「予行演習」と思われた。もうすぐ、各国首脳が集まるG20がロンドンでおこなわれるのだ。
その頃、ロンドンの暗黒街でギャング団の親玉が暗殺された。スナイパーに狙われたのだ。死んだギャングに取って代わって、無法のセルビア人組織と、白人のギャング集団ラムフォード・ボーイズがロンドンを牛耳るようになった。リーチャーとナイスは、彼らに命を賭して戦いを挑む計画をする。
ということで、セルビア人組織に接触して激闘を演じたり、ラムフォードの連中と争いを起こしたリーチャーたち。やがて、スナイパーたちがラムフォードの幹部の家に匿われているとの情報がベネットから寄せられる。しかし、なんの犯罪の証拠もあげられない。英国の法執行機関は手を出せないでいるのだ。
そこで、無法者のリーチャーが幹部宅に突入を企てる、という物語。最後に、コットの黒幕が意外な人物であることがわかるという、どんでん返しが落としどころとして描かれていくのでありました。
ログインしてコメントを確認・投稿する