●「特捜部Qーーカールの罪状」 ユッシ・エラーズ・オールスン著 早川書房 23年版 2200円
シリーズ9。デンマークの新型コロナ禍の2020年11月30日から、物語が始まる。殺人捜査課課長のマークスは、60歳のマイア（女）が自殺したことを知る。マイアは38年前の82年に、自動車修理工場爆破事件の巻き添えで1人息子を失っていた。そのことを、ずっと悔やんで生きていたのだ。
爆発は事故とみなされたが、担当したマークスは今でも殺人事件ではないかと疑いを捨てきれないのだ。そこでマークスは、過去の未解決事件を追う「特捜部Q」の責任者カール警部補に再調査を要請する。
コロナ禍で改修中の警察署で、メンバーが調査を始めると奇妙なことに気づく。現場写真の中に、「盛り塩」があったのだ。88年、98年、2002年の事故又は自殺として処理された現場写真にも「盛り塩」が発見される。さらに、共通点が見つかった。事件の日が、大量殺戮を犯した世界の独裁者の誕生日であること。又、事件を起こしているのが2年ごとと、間隔を開けていることである。
全国の警察に、「盛り塩」のあった死体現場の情報を問い合わせると、驚くことに2年ごとに計17件が見つかった。連続殺人事件である。被害者たちの過去を探ってみると、詐欺の加害者、環境破壊者、武器商人など社会的ルールに逸脱した人物ばかりであることが。そしてもし、2020年に誰かを殺そうと企てているなら、その日は12月18日より後のはず。
独裁者の誕生日を調べると、中国の毛沢東（自国民を何百万人も餓死させていた）が12月26日であった。つまり、9日後に誰かが殺されるかもしれないのだ。犯人は誰か？ 32年前に20代だったとすれば現在50代？
一方、市内でひったくり犯を故意に道路に倒し、ダンプに轢かせたタビタという女が逮捕された。家宅捜索の結果、メモが発見される。メモには、�．機璽�ルのリーダー：デボラ（50歳くらい）、�▲瓮鵐弌次Д汽蕁�35歳くらい）、マルタ（同）、わたし（グループ間での名前はイヴ)、��モットー：「この行いを“私的制裁”と呼ぶ人もいるだろう。でも、これは救済だ」と書かれていた。つまり、「聖戦」の名のもとに私的制裁を行っているグループがいるのだ。そのダビタは釈放された後、ラウンヒルという女性に殺されていた。ラウンヒルはその後、行方不明となった。
Qのメンバーは、このサークルと一連の連続殺人がつながりがあると確信する。やがて、自殺として処理されていた国会議員パレのメールから、シスルという女性実業家との性関係が浮上する。50代のシスルに面会したQのメンバーは、その取りつく島のない態度に違和感を覚える。
一連の連続殺人事件には、ルールがあることがわかる。�―ゞ亀啓阿里茲Δ福崟垢蟇�」は、旧約聖書の内容からとっていること。��2年ごとにやるのは、殺人がバレないため。��殺し方を、被害者の人物像に合わせている。�せΔ稿�を独裁者の誕生日にしているのは、それが「人類の救済」だとしているから、というものである。
そんな最中、卑俗なリアリティ番組のプロヂューサーの行方不明がわかる。26日まで何日もない。本命である。シスルの家を見張っていたQのゴートン（30代）が拘束された。26日が迫っている。シスルの過去を調べてみると、そこには壮絶で無惨な過去が浮かび上がってくるのでありました。
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