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2023年07月08日12:31

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読書紹介2311●「ピラミット」

●「ピラミット」 ヘニング・マンケル著 創元推理文庫 18年版 1400円
 ヴァランダー刑事シリーズは、1990年以降に始まり10冊以上(長編)にわたる。本書は、このシリーズが始まる以前のヴァランダーのことが書かれた中短編の5冊が収録されている。
 第1章「ナイフの一突き」は、1968年にヴァランダー(21)がパトロール警官になったばかりの時に遭遇した事件を扱っている。ヴァランダーのアパートの隣人が死んだのだ。ヴァランダーは捜査刑事になる希望をもっていたが、今はただのパトロール警官で、当時の反ベトナム戦争デモの取り締まりに参加していた。レストランで食事中、突然、17歳の少女から「この警官にわたしは警棒で叩かれた」と糾弾される。そんな時代であった。
 隣室にその後、夜中に何者かが入り込んだ。鍵を預かっていたヴァランダーが中に入ると、何者かは窓から逃走した。これは殺人事件だと、ヴァランダーは独自捜査を始める。そこでヴァランダーは、刑事がやってはいけないことをしてしまう。それは、1人で捜査すること。その結果、ヴァランダーは犯人に心臓近くを刺されてしまう。
 この年、ヴァランダーはモナと結婚し、やがてリンダという1人娘を授かることとなる。
 第5章「ピラミット」では、1989年の事件が描かれる。ヴァランダー42歳で警部補。リンダは高校を中退した19歳。モナとは別居し、それぞれ新しい恋人をつくるが、ヴァランダーは新しい恋人(40)との関係を解消したいと思っている。できれば、モナに戻ってもらいたいのだ。
 第5章での事件とは、スウェーデンに麻薬が大量に出回ってきたこと。3つの事件がたて続きにおこる。1つは、不審な小型飛行機が墜落しパイロット2名が死ぬ。2つは、手芸洋品店の2人の老姉妹が銃で首を撃たれて殺され、店が焼かれた。3つは、麻薬売人のホルムが老姉妹と同じ手口で殺される(同じ銃で)。
 この3つが関連するものとしてピラミット(三角形)をつくったが、その頂点に誰がいるかがわからない。小型飛行機は、ドイツから低空飛行で国境を越え、スウェーデンに麻薬を投下したと推測された。この飛行機は、1960年末にベトナム戦争に使われ廃棄されていたことが判明。
 ということで、ピラミットの頂点である人物について、ヴァランダーの悪い癖(1人捜査)がここでも出てしまう。やがて、・・・。
 本書は、スウェーデンがますます暴力的になり、昔の田舎町イースタなら起こりもしなかった凶悪事件が、当たり前のように起こっているのを嘆く、1人の刑事の奮闘物語でありました。

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