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2023年03月14日13:33

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読書紹介2279●「アンダーカバー(秘密調査)」 

●「アンダーカバー(秘密調査)」 真保祐一著 小学館 14年版 1800円
 本書の主人公は、父親を知らず育ち、苦難の末に東大に入りIT会社を起ち上げる。それを大企業に導いた智貴である。彼は、ゲームを楽しむように仕事をしてきた。Tシャツとジャージを愛用した。セレブらしき暮らしへの執着は、微塵も見せなかった。ただ日本経済の中枢で迫真のゲームができる。それを純粋に楽しんでいたのだ。
 その智貴が、街で知り合ったモデルと2人でフィリピン旅行を楽しんだ。その帰りの空港で、智貴は逮捕される。旅行カバンに麻薬が入っていたのだ。無罪を主張したが、彼には懲役25年が言い渡され刑務所に。
 いつか必ずここを出て、罠に嵌めた者を突きとめてやる。怒りの熾き火を燃やすことで、むなしさに冷えてゆく心を智貴はあぶった。これまでも、どん底の暮らしからはい上がってきたのだ。奈落の底から再び登り詰めてみせると、決意するのだった。
 モデルの娘は、智貴が怪しい男と話し込んでいたと証言して早々に日本に帰っていた。ところが、時代の寵児であった智貴の逮捕に飛びついたマスコミが、彼女を執拗に追いかける。一時姿を消した彼女が、突然、自殺死体で見つかる。
 フィリピンに行く前に智貴がすすめていた企業買収の相手、西山製作所の長男も自殺する。彼は、小型の放射線治療装置を開発しようとしていた。それに目を付けた智貴が買収を目論んだが、智貴逮捕で頓挫する。代わりに名乗り出たのが、スペインの投資会社で、西山製作所に5億円を投資し、その装置の試作品と設計図を受け取った後、会社自体を潰して痕跡を断った。その直後の自殺だった。
 智貴が刑務所に入って、彼の会社は清算された。智貴には株主代表訴訟がおこされ、智貴の全財産が差し押さえられた。会社は顧問弁護士の古賀が、残された社員と共に新会社を設立。この会社は、智貴の縮小コピー会社となった。智貴のアイデアを引き継ぎ、上場企業にのし上がろうとしていた。古賀は、智貴の退場で1番得をした人物となった。
 本書には、ユーロの麻薬取締官、スペインの投資会社、放射線治療器、トルコでの潜水艦の密造、イタリアとトルコのマフィアのボスの拷問と暗殺、アメリカでのテロなど盛りだくさんである。1番おもしろかったのが、智貴の復讐(犯人探しの秘密調査)であった。
 智貴は、1万人も収容されている刑務所でのし上がっていく。フィリピンでは、金さえ払えば何でもできた。個室も好きな食事も、担当の看守と囚人である何人かのボスに金を払えば手に入った。智貴は携帯とパソコンを手に入れ、母親名義で株取式で儲けた。一方で、囚人が作った物の売買をネットを通じて拡大し利益をあげさせた。それは、智貴には簡単なことだった。こうして、全てのボスに利益をあげさせる智貴は、ボスたちにとって「金の卵」を産む鶏となった。ボスたちは、智貴の知恵を借りるため相談に訪れた。
 こうして、ボスたちの信頼を勝ち取った智貴は、自分を罠に嵌めた実行犯を突き止める。それは、ホテルの従業員だった。その従業員を脅し、麻薬を仕込みさせた人物が刑務所に入ってきたからだ。こうして、入所5年目にして智貴の無罪が実証され放免される。智貴は名を変え、顔を変え(整形手術)日本に上陸する。真の犯人を探すためである。
ということで、智貴の秘密調査が始まる。やがて、自殺したモデルを操った人物が炙り出される。会社にスパイが入り込んでいると調べ始めた古賀が、ビルから落とされ殺される。智貴を罠に嵌めた人物に迫りだす。その中心には、放射線治療器の転用という秘密が潜んでいたのでありました。

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