●「人類史にかがやく古代都市はなぜ消滅したか」 アナリー・ニューイッツ著 青土社 22年版 2800円
本書には、�〜�7500年という世界最古の原始都市遺跡、チャタル・ヒュユク（トルコ）、�∪称�79年のボンペイ（イタリア）、��9世紀初頭のアンコール（カンボジア）、��12〜13世紀のカホキア（アメリカ）が扱われている。
チャタル・ヒュユクでは、最大1万人の人口を擁する都市が築かれた。当時の人々とは、狩猟採集から農業・牧畜に移行してきた人々である。チャタル・ヒュユクでは、1部屋平均25�屬箸いΧ垢そ斬陲�隙間なく（蜂の巣のように）建てられ、入口は屋上にあった。同時に屋上は、共同の通路でもあった。
この都市は1000年後に放棄されたが、原因は気候変動（洪水や旱魃）というより人間関係が破綻したと推察された。25�嵒�屋に見るように、人々はほぼ平等な暮らし向きをしていたが、プライバシーや個の観念を身につけるには時代があまりにも早かった。紀元前5000年代、レバント全域で新石器時代（貨幣も文字もモニュメントもない）の巨大村が見捨てられた。これは「公共圏の失敗」だったかもしれない。
古代都市ボンペイは、1万2000人の住民がいた。西暦79年の火山の大噴火で壊滅した。ボンペイは、100年前からローマのリゾート地だった。アフリカとの貿易も盛んで、「アフリカ風」が流行していた程。ボンペイには、パン屋、葬儀屋、墓地、神殿、宝石店、彫刻家、画家、そしてトイレといった公共の場があり、華やかで複雑な公共空間が特徴的であった。
ローマ人はこの都市に、セックス（売春宿）や排泄、娯楽、政治活動、入浴など、あらゆる公共の場を設けた。噴火により人口の1割が亡くなったが、9割は近隣に避難（ボンペイは毒臭で住めなくなった）し、そこにボンペイ風の小都市を次々と再建していったのである。
9世紀初頭に成立したクメール帝国は、アンコール周辺に王都を築いた。以後、歴代の王（ヒンドゥー教徒や仏教徒）たちが人口100万人の大都市を築いた。600年間、15世紀にアンコールが崩壊するまで、この巨大な都市はあり続けたのだ。
アンコールの特徴は、巨大なダムや溜池など水インフラを築いて帝国を維持したことである。しかしこのインフラが、帝国衰退時の弱点となった。その維持管理が、労働力不足で間に合わなくなるのだ。川の水を引き込んで運河に流すが、川は土砂を運び水路を詰まらせる。これを整備する労働力を集められなければ、都市は機能マヒとなるのだ。
クメール王国には、王位継承のルールがなかった。そのためトップの人間でも没落し、その下の人間が台頭した。後継者を巡る戦争が起こり、地方では反乱が勃発した。もちろん気候変動による洪水や旱魃もあったが、アンコールの都市の崩壊は、社会的なものが大きかったかもしれないのである。
カホキアには、ミシシッピ文化期（紀元700〜1600年頃）にアメリカ先住民が築いた大遺跡がある。12〜13世紀当時の政治・宗教の中心地で、人口は1万人に達した。遺跡の中心部分には「中央広場」とピラミッド（最大のものは、エジプトの太陽のピラミッドを上回る）があり、それを囲んで20基ほどのマウンドがある。これが東西北にあり、計120基のマウンドがあった。
カオキアは、先住民の精神上の中心地だった。そのため、周辺から巡礼に訪れたり様々な貢物が上納されていったのだ。1450年頃から衰退に向かう。その原因は、人口過密と伝染病とされているが、政治が原因ともいわれる。カオキアの都市が崩壊後、人々は周辺に部族単位で散っていった。それが、スー族などとして今日知られている。各部族には、カオキアでの習俗が引き継がれていったのだ。
ということで、本書はこれら都市と住んでいた住民目線での物語が描かれている貴重な本でありました。
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