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2022年10月01日12:31

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読書紹介2231●「探花(たんか)ーー隠蔽捜査9」 

●「探花(たんか)ーー隠蔽捜査9」 今野敏著 新潮社 22年版 1650円
 主人公の竜崎は、大森署の署長から神奈川県警の刑事部長に抜擢される。本部長に挨拶に行くと、竜崎と同期の八島が福岡県警から移動して警務部長となって赴任したと聞く。部下によると、キャリア試験で八島が1番、3番が竜崎とのこと。試験の成績順番など、竜崎は初めて知らされる。ちなみに2番は誰かと訊ねると、警視庁刑事部長の伊丹だという。
 伊丹を思い出して(伊丹は、小学校の幼馴染)電話すると、「お前は探花だ」という。それは中国の科挙の合格者のことで、トップが状元、2番手が榜眼、3番手が探花と呼ばれるのだ。「そんな試験の順番など、仕事には関係ないだろう」と言うと、伊丹は「八島は、俺は状元だと偉ぶっている」と、それで竜崎を従えると思っているから「用心しろ」と言うのである。
 ということで本書では、定番となっている事件の発生と竜崎の家庭問題が勃発する。事件とは、横須賀の公園で刺殺体が発見される。目撃者がいて、「白人がナイフのようなものを持って、米軍基地のゲートに向かっていた」というもの。
 家庭問題とは、息子の邦彦(東大生)が映画の留学先のポーランドで「警官に捕まって確保されている動画がSNSに載っていた」というもの。邦彦は電話に出ないと言うのだ。竜崎は、知り合いの外務官僚に相談。「それは個人の問題というより、邦人保護の問題になる」と、早速調べるとのことだった。
 事件は、米軍がらみの可能性があるとして、横須賀基地に申し入れを命じる竜崎。ところが、日米安保がらみで日頃から痛い目にあっている部下たちが難色を示す。それを振り切って、竜崎は基地司令官に自ら訪ねた。竜崎は、「被疑者の身柄は預かる」との条件に捜査依頼を。「それは、現場指揮官が決める」とのことで、海軍犯罪捜査局のキジマ特別捜査官を紹介されるのだ。キジマは捜査本部に合流することとなるが、ここでは日米安保の問題点が描かれることとなる。
 やがて、目撃情報が「あやしい」ことが浮上する。目撃者の身元を調べ始めた頃、その目撃者が行方をくらました。身元は、福岡の暴力団のフロント企業の社員だった。直ちに緊急配備をひくが小型ボートで逃げた後だった。ということで、目撃者=推定犯人の指名手配がされ、追跡が。彼は、横須賀から千葉の浜金谷、そして東京へと潜伏して行く。
 一方、ポーランドの邦彦は、ポーランド警察の手で下宿の家宅捜索が。部屋には、「事件の様子はない」との報告が。もともと、警察庁の課長で階級が警視長だった竜崎が大森署に左遷されたのは、邦彦が麻薬を所持したからである。又、麻薬がらみで事件を起こしたら「アウト」である。「待つ以外にない」状態にイライラする竜崎。やがて、妻から「電話が繋がった」との連絡が。SNSの動画の秘密が明らかになるのだ。
 本書では、状元の八島が福岡で衆院議員のスキャンダル(暴力団の宴会に参加していた)をもみ消したこと。この暴力団が、新たに開通した新門司・横須賀間のフェリーを利用して、麻薬を横須賀に運ぶルートを開こうとしていた問題が描かれていくのだ。そこに、原則通りの行動をする竜崎に、議員も八島も翻弄される、という訳。 

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