●「トッカンーーthe3rdおばけなんてないさ」 高殿円著 早川書房 12年版 1600円
シリーズ３は、おばけにまつわる話し。トッカンこと、東京国税局特別国税徴収官（税務署の課長クラス）の鏡（35歳）は、半蔵門の高級マンションに１人で暮らしている。ところがこのマンション、事故物件で９万円台で借りているのだ。鏡の前のマンションも事故物件で、その部屋でも死体が発見されていた。
鏡の誕生日の時、保育園児である娘が父親を喜ばせようと車庫に隠れていた。帰ってきた鏡は、娘を轢き殺してしまった過去があった。この事故で、高校生で出来ちゃった結婚をしていた鏡夫婦は、離婚することに。
それ以来、鏡の住むところは決まって事故物件。できるならば、娘に出てきて欲しかったのかもしれない。そして休日はロードバイクを走らせ、頭が真っ白になるまで走り続けるのだ。職場ではもっとも難しい案件を抱え、「死に神」と呼ばれるほどの活躍をし、30代なのにトッカンに就任したのだ。
シリーズ３では、栃木に出張して２件の案件を解決する。その１つが、霊感商法で4000万円の脱税をした教祖が行方不明になっている件であった。差し押さえするにも、本人の行方を確認する必要があった。鏡は、教祖の元夫が栃木に向かったことを探り（栃木は鏡の地元で、情報を集めた）、元夫が山奥に早朝に行っていることを確認。こうして元夫を引き連れて現場に行くと、教祖の死体が・・・。
一方、所轄の築地の酒店の滞納者が急に納め始めた。それも月々４万円と納付額は少なかった。トッカン付けのぐー子は、同僚から酒店の蒸発していた夫が新宿区で生活保護を受けているとの情報を得る。生活保護を受けるのと、納付時期は同時期だった。
築地の酒店に赴くと、戦前に作った防空壕跡（今は地下倉庫に）から、叫び声が聞こえる。その声を打ち消すために、大音量の曲が流されていた。その倉庫には、蒸発したはずの夫が・・。そこには哀しい家族の事情があった。
という、胸詰まる小説でありました。
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