●「トッカンVS勤労商工会」 高殿円著 早川書房 11年版 1600円
勤労商工会（勤商）とは、弱者救済を掲げる中小業者のための任意団体。シリーズ２では、この勤商が主人公で京橋地区税務署の徴収官のぐー子（26歳）の上司で特別国税徴収官の鏡（35歳）を、「業者を恫喝し、自殺に追い込んだ」として訴えようとしたことに始まる。
さらに、勤商の顧問弁護士兼税理士の吹雪が、やたらとぐー子の周りに現れる。この吹雪は、東大在学中に司法試験に受かり、裁判官を経て弁護士となったエリート中のエリート。それも、祖父が労働党（勤商が支持母体）の代議士で、ゆくゆくは吹雪を国政に出そうとしていた。
吹雪は、鏡の私生活を嗅ぎ周り（過去に幼い娘を事故で車で轢き殺した）「必ず責任をとらせて、税務署から追放させてやる」と豪語。吹雪は、国家権力そのものに特別な憎悪をちらつかせるのだ。
ぐー子は、鏡が自分の事件なのに傍観者然としているのに業を煮やし、自殺した業者のことと、遺族である妻のことを調べることに。そこに、鏡の高校の同級生２人（弁護士と財務省のエリート）が助っ人として現れる。
こうして、自殺する４ヶ月前に業者の土地建物の所有権が妻に移す登記がされていたこと。さらに、それには抵当権がつけられ（税務署が取り上げられない）たこと。その抵当権者が妻の叔母92歳であること。その叔母は、何年も前に認知症で施設に入っていることを調べ上げた。
一方、ぐー子の職場に勤商が業者を引き連れて「相談」に押し掛ける。それに積極的に応対するのが、ことし京橋に配属されてきた錨（34歳）徴収官であった。彼女の夫は、エリート商社マンであった。しかし、錨の頑張りに不自然さを感じたたのが、同僚で徴収課上席の鍋島（38歳）女史であった。
やがて、京橋税務署の情報（鏡のことを含め）が勤商に漏れていること。そのため、徴税対象となった業者が突然、勤商の幹部と共に訪れている疑いが浮上する（勤商は、この行動を総選挙対策としてやっていた）。
果たして、鏡の運命は・・・。という物語。本書は、なによりも愚直に突き進むぐー子の一生懸命さが魅力である。その飾らぬ人間性に、明日への希望と感動を感じ、胸が熱くなるのでありました。
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