●「カーリー�供次�21発の祝砲とプリンセスの休日」 高殿円著 講談社文庫 13年版 629円
ヨーロッパ戦線は1940年、前年に独ソ不可侵条約が結ばれたあと、ドイツはデンマーク、オランダ、パリを占領していく。英国の平和主義者チェンバレン内閣は、ノルウェー作戦失敗の責任をとって総辞職した。それに代わって、英国の財布であるインド・アフリカの権益を維持しようとする海相チャーチルが首相に就任する。
インドでは４つの勢力があった。１つは、英国のインド政庁。２つは、マハラジャの治める数百の藩王国。３つは、ネルー率いる国民会議（ガンジーも）。４つは、ヒンドゥに不満を持ったイスラム連盟である。
英国がドイツと戦争を始めればインド独立の絶好の機会となり、その活動が活発化する。藩王国間では、ヒンドゥとイスラムの協調のため、インド南部の大国ハイデラバード（イスラム藩王国。ヒンドゥ勢力のど真ん中にある）とバンダリーコットの隣国でヒンドゥの大国パローダとの政略結婚が進行していた。
�挟�では、このパローダの第１王女（プリンセス）パティ14歳が、オルガ女学院に突然入学する。パティは、結婚前に自分の「やりたいことリスト」を実現させるために入学したのだ。彼女のわがまま放題に、シャーロットたちは振り回されるハメに。
やがてパティの入学が、恋人と駆け落ちするためだったことが明らかに。学院に入れば、監視の目がゆるくなるからだ。そのパティの相手とは、ニューデリー特派員のエドであった。エドは、写真好きのパティに写真の魅力を伝授した人物だった。女学院に入学したパティは特別室に入り、侍女にカーリーを指定（パティとカーリーは幼馴染み）。シャーロットは、カーリーと引き裂かれることに。
しかし、パティの目的を知った学友たちはパティに協力する。特にシャーロットは、パティとエドの橋渡しの役割が。ホーリー祭の日、騒ぎに紛れて学院を脱出したパティはエドに再会。それは、何もかも英国情報部の計画の上にあった。
情報部としては、藩王国同士がいがみ合う（英国の占領支配戦略）ことが最上であった。そのため、パティのせいでこの婚姻を潰させる必要があったのだ。シャーロットは、その駒にされていたのだ。
本書は少女たちの物語なのに、何とも壮大な歴史小説ともなっていたのでありました。
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