●「カーリー�機次鴫�金の尖塔の国とあひると小公女」 高殿円著 講談社文庫 12年版 600円
本書は、バーネットの「小公女」を下敷きに、舞台を英国からインドに、時代は19世紀から20世紀の1940年前後に移している。
主人公のシャーロット14歳は、父の仕事の都合（インドの藩王国バンダリーコットの大使に赴任）でロンドンからバンダリーコットのオルガ女学院（英国領）に転入する。この全寮制の寄宿舎では、ルームメイトのカーリー13歳（インド人の父と英国人の母のハーフ）と共に過ごすことに。
ここでネタばらし。カーリーは、シャーロットの父親違いの弟で、バンダリーコットの王太子。しかし、英国嫌いの親戚に命を狙われ（英国が、カーリー以外の王太子を暗殺したとの噂が）行方を眩ませていた。しかし、第２次世界大戦の勃発を間近にして、英国がヨーロッパでの戦争（ナチスドイツとの）に集中せざるを得なくなり、インドで一気に独立の気運が高まる。こうして、いつでも王宮に帰れるよう女学院で女生徒に化けて潜伏していたのだ。
ところで、インドの英国領での英国人たち（ミドルクラスの人達）である。インドでは、自分達を疎外し差別する貴族階級がいない。それで本国とは遠く離れた地で、莫大な俸給とともに、突然すべてのヒエラスキーの上に立ったこととなったため、バンダリーコットでの社交界はミニ英国化し、100年前の英国風俗が復興していた（つまり古臭い）。
それは子ども達の世界にまで及び、オルガ女学院のなかでシャーロットもその古いしきたりとヒエラルキーのなかに晒されることに。同時にインドで暗躍する英国情報部が、大物を釣るための「餌」にしようとシャーロックを狙っていた。
その理由は、シャーロットの母が情報部のスパイでS（色仕掛け）を担当していたこと。その母の生死は、インドに渡ったきり杳として知れなかった（父は、死体と対面したと言う）が、その子もスパイにしようというのだ。
それら、すべての事情を熟知していたのがカーリーであった。カーリーは、シャーロットを護るため全力を尽くすのであった。そんな事情など何も知らないシャーロットは、初めてのインドでクラスメートたち（各国から来ている）との交流で、世界のことを学び成長していく。神秘的な少女カーリーと、個性豊かな仲間たちのなかで、激動の時代を懸命に生きる少女たちの姿が、本書では鮮やかに描かれているのでありました。
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