●「回帰」 今野敏著 幻冬舎 17年版 1600円
警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ。東京の中心地・千代田区で爆弾テロが発生した。爆弾が仕込まれた車が爆発したのだ。死傷者が数人出た。指揮本部が設けられ、公安が出動した。テロは公安の管轄だが、殺人は捜査1課の管轄である。指揮本部では、双方が協力することに。それぞれの部長も乗り込んできた。
そんな中、樋口の元上司でもある天童のもとに、天童の元部下・因幡から電話があった。因幡は、公安から「テロのメンバー」と思われていた人物。彼は、このテロは「聖戦のための国際戦線」のスリーパーが起こした、というのだ。
因幡は現職の警察官だった時、その正義感ゆえに暴走し書文を受け辞めた人物だった。その後、世界を放浪していたのだ。スリーパーとは、現地に溶け込んで生活している人物(忍者でいえば「草」)で、ある事柄を発見し本格的なテロを作動する前哨戦として、今回のテロを仕掛けた、というのだ。
ということで本書では、公安部と刑事部の軋轢とやがて協力に移行していくまでの各々の葛藤や、テロの犯人に仕立てられた日本生まれのパキスタン人(国籍は日本)の、差別や偏見との戦いなどが描かれる。
話が、国際テロ組織との戦いという壮大なものになったが、このシリーズはあくまで人間関係を中心に描いた本。お約束で、樋口の家庭内の騒動についても描かれていくのでありました。
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