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2020年11月23日11:32

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読書紹介2000●「アンカー」 

●「アンカー」 今野敏著 集英社 17年版 1600円
 本書は、10年前に起こった「町田市大学生殺人事件」について、テレビのニュース記者が注目したことと、警視庁の継続捜査課の刑事が再捜査を始めたことから、相互が関連しながら進展していく物語。
 アンカーとは、ニュースキャスターがニュース選んだり、インタビューをしたり、コメントすることを指す。つまり、アンカーにはそれだけ大きな権限をもっているのだ。ところが日本では、その役割をデスクが負っている。ニュースキャスターはデスクの指示どおりにしか発言も行動も許されていないのが現状である。
 ネットの普及もあって斜陽となったテレビ番組のニュース報道を担当するデスクとその仲間たち(ニュースキャスターや記者、デレクターなど)が、なんとかしてテレビでしか できない報道のあり方を模索する物語。
 ある日、東京のキー局に副デスクとして関西から転勤でやって来た人物がいた。彼は、これまでのデスクのやり方とは違うことを次々と発言。デスクは、自分のやり方を否定されていると反発する。
 ここで、ジョーナリズムの理念とは何か、それとテレビ局という商業主義とどう折り合っていくのかが、登場人物たちの対立とともに語られていく。そして、現実にはジャーナリズムの理念とはほど遠い番組がつくられていること。それを打破するにはどうすればいいのかが模索されて行く。
 「権力の監視や批判もマスコミの役割のはずだ。だが今のテレビにはその迫力はない」と、デスクの鳩村は思っている。しかし、鳩村のやっていることは旧態依然としたものだった。そこに、ニュースキャスターの鳥飼が「アンカーとして発言したい」といいだす。そしてその発言が、視聴者の反響として返ってきた。
 一方、記者たちの取材と継続捜査課の刑事たちの捜査が微妙に影響しあい、10年前の犯人が逮捕されていく。ジャーナリズムの理念と現実、という面白いテーマの小説でした。


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