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2020年09月17日10:03

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読書紹介1969●「任侠病院」

●「任侠病院」 今野敏著 中公文庫 15年版 740円
 任侠シリーズの第3弾。今回は、一部地元住民の暴力団追放の動きと、負債を抱えた病院の再建話。代貸の日村は、潰れかけた病院の理事となり建て直しに奔走することに。その取っ掛かりが、薄汚れた外壁と暗い天井の蛍光灯の取替であった。
 オヤジである阿岐本組長・阿岐本が「汚れたところにいると、人の心もすさんでくる。陰気な病院だと、治るものも治らない」との一言で始めたのである。ところが、この掃除に待ったがかかった。
 病院の掃除だけではなく、消耗品の購入、売店の商品納入、入院患者の給食、医療廃棄物の処理等の外注をまかされている業者からのクレームであった。この病院の経営困難の原因が、この業者の高過ぎるマージンだったのだが、何故か契約変更ができないのだ。日村が調べると、この業者の背後に関西系ヤクザの枝の枝のヤクザ(これは関東)がいたのだ。
 やがて、地元の暴力団追放(阿岐本組に出て行け、という運動)の背後にも、都市再開発にからむ不動産屋(上記のヤクザのフロント企業)がいることを掴む。オヤジは、「売られた喧嘩は買ってやる」と平然としているが、日村は気が気ではない。
 病院は、女たらしの子分・真吉の力でみるみる明るくなった。それは、受付の女性に「この花(その女性の誕生花)を飾って下さい」の一言から始まっただけであった。ということで、外見も中身(看護師や事務員)も明るくなった病院。スタップが一丸となって、再建に取り組む意欲を見せ始めた時、新監事となった阿岐本親分と日村を車で連れ去っていったのが・・・。という物語。
 今回も、病院経営とヤクザ稼業というギャップの激しい難題を、日村は四苦八苦して解決していく。阿岐本親分の言う「蛍光灯を取り替えるという作業は、未来につながるんだよ」という、格言めいた言葉も印象的。涙あり笑いありの物語でありました。

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