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2020年03月19日06:59

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読書紹介1909●「燃える水」 

●「燃える水」 河合莞爾著 角川書店 18年版 1600円
 本書の著者の、これまでの本の中では珍しくユーモアに溢れる本であった。テーマは、エネルギー問題である。主人公は、日本を代表する電気メーカー(東芝を連想させる)の庶務課係長・平原。会社で出世するよりも、妻を大事にする気弱な事なかれ主義の男であった。
 水は、水素と酸素の化合物。分離できれば、とても燃え易い物質である。容易に分離できる技術がわかれば、化石燃料も原子力も不要となり、地球温暖化問題もいっきに解決できるのだ。本書では冒頭、アメリカでその特許を申請した人物が、毒をもられて殺される場面から始まる(世界中で同様な例が)。化石燃料や原子力に莫大な資金を投じている企業や政府は、その儲けをふいにする「燃える水」の存在を決して認めないであろうことが描かれていく。
 ここで、アメリカの原子力を買収して大赤字を出した平原の会社がリストラを始めたこと。その対象者に平原がなり、脅されて承諾してしまうこと。安定所通いで紹介された零細電気メーカーの人事課長となったことが、面白おかしく描かれる。
 ところがこの零細企業は、中国との合弁会社事業で裏切られ(技術を盗まれ、特許裁判で破れる)破産寸前の状態であった。そこで、大企業から来た人事課長がリストラ役を担って、情け容赦なく断行する役回りを、平原が求められたのだ。
 平原が最初に手をつけたのは、2ヶ月前に自宅で死亡したエンジニアの労災認定問題だった。この社員は、会社の太陽熱温水器と太陽光発電装置を担っていた社員で、残業禁止の命令で自宅で研究を続けていて感電死したのだ。不思議なことに、水しかない現場で、社員は胸の衣服の一部を燃やして死んでいたのだ。
 ということでやがて、死んだ社員が偶然にも「燃える水」の仕組みを発見していたことが明らかにされていく。それに絡んで、リストラ対象者が選ばれていたことに平原は気づくのであった。
 最後に、一発逆転のドンデン返しがあるが、ユーモアに満ちた本でありました。

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