偶産種:その土地には生息しておらず、偶然に他の地域から運ばれてきて発生した種。
今年の初めに自宅隣の神社で複数個体を見つけたマエフタホシテントウは、その後は少なくともその近辺で見つかることはなく、偶産だったようである。
しかし、そのマエフタホシテントウ、近頃近場でちらほら見つかっているという話を耳にする。偶産が重なっていくと、やがて居つくことになるだろうか。いったん居つけば、発生は偶然ではなくなるため、呼び方が偶産種から移入種または外来種に変わる。
自分のテリトリーで今年出会ったもう一つの偶産種(と思っているもの)は、隣町の神社で見つけたチャイロホソヒラタカミキリである。このカミキリは、東京の市街地に居ついているとは思えないが、実は分布はきわめて広く、フランスにも米国にも生息している。乾燥に強く、加工された材の中からも羽化して出てくるというので、木材とともに世界中に運搬され各地で偶産を繰り返しているうちに、コスモポリタンな分布となってしまったのではないか。
ある場所でそこでは珍しい虫を見つけた場合、実際のところ、その個体が偶産かどうかは見分けがつかない。在来種なのに単に見逃されていただけかもしれないし、もうすでに移入種または外来種としてその土地に定着しているのかもしれない。
さらに蛇足を言えば、偶産種かどうかという判断は、地理的範囲を限定した場合にのみ有効となる。宇宙人から見れば、地球の虫は地球のどこで見つかろうとそれは単に地球産の種であって、その土地で偶産だったのかどうかはあまり意味のないことである。
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