●「身体の言い分」 内田樹・池上六朗著 毎日新聞社 05年版 1500円
私たちの体は好むと好まざるとに拘わらず、その起源から一代も途切れることもなく現在にいたっている最新バージョンである。この事実を振り返って、あり合わせの材料の最大限の活用方法を工夫し、人間性の回復を手近なところでやろう、というのが本書のテーマ。
「哲学」や「科学的理論」は、複雑な現実をわかりやすく語ろうとした「仮説」・辻褄のあった「お話」であること。「わかりにくい哲学」とは、圧倒的に豊かな現実になんとかついていこうとして息絶え絶えになったものであること。
人間は生物なんだから、原始の世界では、たとえば群れの中の1人がリラックスした状態をつくれば、ほかは全部安心していたこと。「ああ気持ちがいいな」って、ため息をつくような幼児体験(世界と調和した身体)が重要で、それがあれば快楽な生き方ができる。つまり、快適に生きようと思ったら、自分で快適だと思うことをやっていけばいい。自分のためにいいように、せべてを処理する。すると結果的に、いい人でいられる。それを追求していれば、周りの人もみんな充分がよくなる。
それとは逆に、「やるべきだから、やる」なんて踏ん張っていると、結果的に周りの人がいやな気分になる。だから、原始からめんめんとつづいている身体の言い分を聞いて生きていこう、という本でした。
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