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2019年11月02日11:31

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読書紹介1863●「義和団の乱」 

●「義和団の乱」 松岡圭祐著 講談社 18年版 2300円
 「時は1900年、北京の夜のこと」で始まる、欧米・ロシア・日本11ヵ国の北京の紫禁城侵攻事件は、「義和団の乱」を発端にしている。本書では、義和団がどのような「やむにやまれぬ」理由で組織されたか。それが、どのように清朝政府に利用されたかが描かれる。こうして、北京にある各国公使館が義和団20万人に包囲され襲撃されるに至ったかを、それぞれ義和団側、清朝政府側、各国公使館側から描かれる。
 本書では、日本公使館の駐在武官・柴五郎中佐の活躍を、日本陸軍桜井伍長の目を通して描かれる。柴中佐は「義和団の乱」後に、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、ベルギー各国から第1勲章等をそれぞれ授与されている。これは、各国公使館の籠城戦を的確に指揮し、落城させなかったこと。清国人クリスチャン3000人を救出した功績を称えられて授与されたものであった。
 柴五郎の名は、「タイムズ」紙にその功績が報じられたことから欧米で広く認知され、清国の一般市民からも支持を受けたのであった。本書では、柴五郎の幼年期に会津若松で官軍の攻撃にさらされ籠城の経験があったこと。その後、陸軍幼年学校を経て中佐にまで昇りつめたこと。語学の才能に優れていたこと。東洋人蔑視の欧米人をも納得させる紳士的な態度と実行力について、あますところなく描いている。
 こんな人物が日本にいたのだ、と思わされた。同時に、柴が日本陸軍がとりいれた「ドイツ陸軍の精神性重視」の軍隊教育(それまではフランス陸軍の方式を採用)が生み出す欠陥に批判的だったことで、義和団の乱以後、左遷同然の扱いを受けるに至ることが、「後記」に記されている。
 本書で鼻についたのは、現今の日本政府がはやし立てている「クールジャパン」に似た、「日本の優秀さ」の描写であった。しかし、1900年当時の日本人は、総じてこうした資質を持ち合わせていたのだろう、とも思った。その日本人の団結力、献身性、思慮深さゆえに、義和団の攻撃による「公使館たてこもり」の日々を、欧米人に率先して実行してみせ、彼らと共に耐え抜くことができた事実を認めたいと思ったのでした。

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