●「ローマ人に学ぶ」 本村凌二著 集英社新書 12年版 720円
著者は、ローマ人の歴史には「なんでもあり」だと云う。君主政も共和政も民主政も衆愚政もあり、革命もクーデターもテロもなんでもあり。その興亡史（1200年以上）は、起承転結がはっきりしており、話題はくめども尽きないのだ。
17~18世紀の興隆期の英国では、教育システムのなかにローマ史を学んでいた。それが、大英帝国を担う人物を輩出させたのだ。20世紀になると、この経験が米国の覇権に連なってくる。英国人の培ったノウハウを米国人は受け継いだのだ。
ということで、古代地中海世界（千を超えるポリスがあった）のなかでなぜローマだけが大帝国をなすことができたか。その答えの1つは、「父祖の遺風」を次の世代に伝える熱意があったから、としている。これは、日本の武士道と重なるものである。
前3世紀にギリシア人がローマを訪れ、� 峅�者の集まりのごとき元老院」、�◆崑親�怪獣ヒュドラのごとき民衆」と、素朴な印象を残している。しかし、長く続いた平和に翳りが見えてくる。軟弱な人心による堕落が蔓延していくのだ。そこで、人心を高揚させ活発にする見世物が与えられる。それが、剣闘士競技だ。流血の見世物は非情で残忍である。だが、そこには血を恐れず死にもひるまない強靭な魂が育まれるという思惑がひそんでいた。それは、歴史の宿命への挑戦でもあったのだが、ローマの凋落をくいとめることはできなかった。
3世紀、東方起源の神々の1つであったキリスト教が普及しだしたのは、混乱と危機の時代であったゆえであった。
ログインしてコメントを確認・投稿する