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2017年11月14日12:56

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読書紹介1685・「聖灰の暗号 下」

●「聖灰の暗号 下」 帚木蓬生著 新潮文庫 10年版 552円
 フランスとスペインの国境となっているピレネー山脈のフランス側、そこはオキシタン地方(現在の、アリエージュ県)といって、かってカタリ派の領主がいて、領民と共にカトリックの十字軍と戦った地でもあった。
 カタリ派の重要拠点はモンセギュール城で、十字軍に敗れたカタリ派はこの城で信徒200名が火刑に処せられた(1243)。その後200年もの間、カトリックによるカタリ派狩りは続けられ、カタリ派の聖職者はことごとく火刑に処せられ、壊滅するのだが、その記録を弾圧側のカトリック大司教のオキシタン語の通訳官・ドミニコ会修道士レイモン・マルティが残していた。
 上巻では「第1手稿」として、第2・第2の手稿の隠し場所を記した地図とマルティの詩が発見されたこと。下巻では、第2・第3の手稿が生命にかかわる妨害にさらされながら発見され、その全文(著者の創作が)100ページにもわたって紹介されるのだ。
 そこには、マルティが祖父から聞いたモンテギュール城での火刑の様子から、カタリ派の最後の聖職者の逮捕や火刑の様子が静かな悲しみを込めたタッチで描かれていた。この部分(100ページの手稿)をとっただけでも、本書が名著であることわかった本であった。
 本書は、カタリ派の聖職者が審問官の審問にこたえ、カタリ派の教義を明らかにしているのだが、「これこそ宗教だ」と思わせられる迫力に満ちたものであった。偶像崇拝を拒み、清貧を旨とし、信仰に篤かったカタリ派の人々。「嘘を言ってはならない」との教えに従い、審問に正直にこたえる信徒たち。教会さえ持たないまま、200年もの長きにわたって信仰を維持した信徒の生活、実践の日々に、宗教の本来の姿をみる思いであった。
 それに比べ、カトリックの聖職者のきらびやかな僧服や、豪華絢爛たる教会の飾、聖書に背き人殺し(火刑や拷問)を恥じることなく命じるその姿の醜さを、本書ではありありと描いていたのでありました。

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