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2017年02月27日09:44

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読書紹介1617・「プレイバック」

●「プレイバック」 レイモンド・チャンドラー著 早川書房 16年版 1700円
 本書は、村上春樹訳の私立探偵マーロウシリーズ第7巻で最終話。チャンドラーの遺作となった。原案は、47年に映画のシナリオとして書かれたが映像化されなかった。それを材料にして本書が書かれたのだ。チャンドラー70歳の時である。
 本書には、日本訳を担当した生島治郎の「タフじゃなくては生きられない。やさしくなくては、生きる資格はない」の名台詞が有名で、この言葉が1人歩きしてしまった。村上は、この名台詞を使っていない。何故なら、チャンドラーの作品にはたくさんの金言がちりばめられているからで、それを全部読者に味わって欲しいと願っているからだ。
 本書の中には、高級ホテルのロビーに座り続けている老人の描写がある。若い時に耳を患い、読唇術を学んでいた。それを知らないホテルの住人たちは、ただの耳の聞こえない老人と思っているのだ。この人物がマーロウを指先で呼んで、ホテルの従業員や客たちの素性について語って聞かせるのだ。他にやることのない暇な老人の話好きに閉口するマーロウだが、この老人の言葉の中にも金言がちりばめられているのだ。そんな場面が随所にある小説だった。
 さて本書である。ある日、高名な弁護士事務所からの依頼で、マーロウは1人の女性の尾行を受ける。ところがこの女性には、ゆすり屋のミッチェルやら私立探偵のゴーブルなどが張り付いているのだ。マーロウは、ミッチェルとゴーブルに拳銃で脅されることに。
不審に思ったマーロウは弁護士事務社に女性の正体を糺すが、弁護士事務所も他の都市の弁護士事務所からの請負で何も知らなかったのだ。
 そこでマーロウは、女性・メイフィールドに直に接触して、自分の正体を明かす。やがてミッチェルがメイフィールドのホテルの部屋の「ベランダで死んでいる」と、メイフィールドがマーロウに助けを求めてくる。
 ホテルに行ってみると、ミッチェルの姿は跡かたもなかった。やがて、ミッチェルに続いてホテルの夜間警備員の1人の死体も、マーロウが発見することに。いったいメイフィールドの秘密とは・・・。という小説。
 街の様子やホテルの従業員のことなど、その仔細な描写がチャンドラーの特徴でありまた魅力であることが、本書を読みながら感じたのでありました。

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