●「三十三時間」 伴野朗著 集英社 16年版 2800円
この本は、集英社の「冒険の森へーー傑作小説大全9」の中に収められていた長編小説である。伴野氏の本は大方読んだつもりだったが、本書は読んでいなかった。舞台は、終戦時の中国である。まだ日本軍が武装解除しておらず、蒋介石の国民党と延安の共産党と日本軍の三つ巴の戦いが続いていたのだ。
そんな中、玉音放送が無線機の破壊で伝わっていない島(日本軍千名が占領している)があった。終戦の詔勅を知らせるために、そこに朽ちそうな小型機帆船で島に向かうまでの33時間を描いたのが本書。
この島には、中国の宝が運ばれている。それを、蒋介石の個人的な命令で奪還しようとする闇の組織と、日本軍の闇の人物が激突するハードボイルド小説で、テーマは「個人と国家」である。
本書の第2部は、小型機帆船内で次々と起こる殺人事件の謎で、ミステリ仕掛けになっているのでありました。
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