●「粛清の嵐」 佐藤賢一著 集英社 13年版 1600円
小説フランス革命�勝�パリでの3度目の蜂起は、パリの第2助役エベールによって起された。外に戦争、内に反乱、それも反革命、親カトリックの王党派に、反パリの連邦主義者まで加わった。連邦主義者の蜂起が、カーン、ボルドー、マルセイユ、リヨンと地方で相次いだことが、「ジロンド派が内乱を起こした」と、パリは腹を立て始めたのだ。その怒りが、マラ（ジャコバン派の国会議員）の暗殺（地方で、ジロンド派の演説を聞いた若い女性が、1人パリにやって来てマラを殺した）で、いよいよ決定的となった。
「黒幕はジロンド派だ、ジロンド派など殺してしまえ」と、そうした声が高ずるに乗じて成立したのが、ジャコバン派による恐怖政治だった。8万人といわれるパリの群集が蜂起したが、これまで血は一滴たりとも流されていなかった。しかし、国会議員たちはジャコバン派を含めて群集によって拘束状態となった。エベールはジャコバン派だったが、かっての仲間を外して自らコンドリエ派（エベール派）を称した。そしてこのコンドリエ派の勢いは、手がつけられなくなるのだ。
これまでの政治では適用しない。生ぬるい方法では革命は達せられない。「ゆえに恐怖政治の設置」が国会で議決させられた。さらに、「目下共和国が置かれている状況では、憲法は打ち立てられない」として、採択されたばかりの共和国憲法が封印された。憲法がないということは、公安委員会（国会までも監視する権限を与えられていた）を縛る規範がなくなった。憲法から自由となった公安委員会は、まるで王となった。それは、集団指導体制の君主制だ。一切の法律に縛られないからには、すでにして絶対の存在となった。恐怖政治というのは単なる独裁に留まらず、まさに現代に復活した絶対王政であった。この公安委員会の大半をエベール派が握ったのだ。
ここに、パリを逃れたジロンド派議員を除くすべてのジロンド派議員が逮捕され、瞬く間に断頭台へと送られたのである。ジロンド派の崩壊である。残ったのは、第1の蜂起の立役者デムーラン、第2の蜂起のダントン、そして清廉潔白の人ロベスピエールだった。この3人による、エベールへの反撃が、ここに開始されることに・・・。
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