●「ダブル・フォールト」真保裕一著 集英社 14年版 1500円
本書は、新米弁護士の成長物語。ダブル・フォールトとはテニスの用語で、1回失敗しても2回まではサーブ出来る、というもの。主人公の本條は、住民訴訟で有名な高階弁護士事務所のイソ弁(居候弁護士)である。本條はある日、高階から殺人事件の被告の弁護を担当するよう言われる。法廷では、高階が主任弁護士として参加してくれるとのこと。またとないチャンスに奮い立つ本條だった。
被告の戸三田は自首していて、殺人を自白していることから、あとは過剰防衛又は正当防衛に持ち込めれば上々の裁判となる。そんな気分で戸三田と接見した本條は、戸三田が自分に隠しごとをしていると直感する。その言質が不自然だったのだ。しかし高階からは、「被告を信じて全力を尽くせ」と諭される。
ということで、被害者(街金の高利貸屋)の身元を調査してその悪行を裁判で暴き出した本條は、被害者の娘・香菜から「人殺しを助ける弁護士は、人殺しと同じだ」と罵られる。そればかりか、本條に付きまとい始めるのだ。やがて香菜に同情し始めた本條は、戸三田が「嘘をついている」と確信したことから、高階から戸三田の弁護を外されることに。高階が戸三田の嘘を承知していることに不可解さを覚えた本條は、香菜と共に高階の過去を調べると・・・。最後にどんでん返しが待ちうけていたのであった。
本書では、近年大量に量産された新米弁護士の過酷な生存競争の実態など、興味ある内容が描かれていました。
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