●「清掃魔」 ポール・クルーヴ著 柏書房 08年版 1700円
「清掃魔」という題名に魅かれて手にした本。中身は、ニュージーランドのクライスチャーチという街の警察署で、清掃人として働く「のろまのジョー」が主人公というだけで、清掃魔のことではない。だがこのジョーは、障碍者を装っている連続殺人魔であった。本書の面白いところは、このジョーが自分がやっていない殺人まで自分のせいにされ、その模倣犯を放置できずに探索に乗り出すところにあった。
ということで、のろまのジョーが警察署の中で「天使の笑顔」で刑事たちに愛されている様子が描かれる。そんな中で、刑事たちの捜査の様子をテープにとって盗み聞きしたり、事件の関係ファイルをコピーして独自の調査を行うのだ。
ところが、これまでの完璧な犯罪シナリオが、この模倣犯捜しによって亀裂が生じてくる・・・。という物語。
現代世界の「理由なき殺人」を、犯人の側からリアルに描きこんだ傑作。本当は風光明美なクライスチャーチという街が、ジョーの主観では薄汚く淫売が屯する犯罪の街に変貌してしまうのでありました。
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