●「デズデモーナの不貞」 逢坂剛著 文芸春秋 99年版 1524円
逢坂の百舌シリーズの最新版を読んだ関係で、本書を手にとった。本書には、池袋西口の裏通りにある小さなバー「まりえ」を舞台にした5話が収録されている。「まりえ」には、様々な訳あり人物が通って来る。女主人のまりえは、口数が少なく客のうわさ話を一切しない。客に対しても無愛想である。
客の中には、行動療法によるサイコセラピストをしている久保寺という精神科医もいる。表題になっている「デズデモーナの不貞」は、オセロという夫に「不貞をしている」と責め立てられる妻・デズデモーナの病状の物語である。
嫉妬妄想のことを「オセロ病状群」といい、そのオセロに責められて起こる精神病を「デズデモーナ病状群」というそうである。デズデモーナは、自己防衛反応のため、ヒステエイー性全聾状態になったり、万引きをしたりという病状をあらわすのだそうだ。
そんな話が7つ、淡々と語られていく小説でありました。面白かった。
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