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2015年06月27日08:40

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読書紹介1419・「ブラック オア ホワイト」

●「ブラック オア ホワイト」 浅田次郎著 新潮社 15年版 1500円
 本書は、引退した商社マンの旅先での不思議な夢の話。主人公の都築君は、3代つづく商社マンである。祖父は南満州鉄道の理事を務め、戦後に商社に招かれた傑物であった。父は養子で、祖父に見い出された人物であった。会社の「縁戚者の同時入社禁止」の定めのため、50代で会社を辞め息子の都築君を入社させた人物であった。その生まれながらのエリートであった都築君が、スイス、パラオ、インド、北京、京都でみた白い枕での良い夢と、黒い枕での悪夢を、同級生の私に語る物語。主に、80年代の高度成長期時代のことである。
 パラオでは、太平洋戦争中の日本の統治下でのことが。北京では、天安門事件直前の中国のことが語られる。都築君は、白い枕の良い夢(自分が社長になっていたり、王様になっていたり)をみながら、翌日には黒い枕でみた悪夢(同僚や取引相手の裏切りに会う)を信じ、各地の商売を失敗してしまう。そのため、本社に戻され窓際族にされてしまうのだが、3代つづく番頭という立場が恐れられてもいたのだ。
 こうして本書は、日本の商社というものが戦前・戦後ともに国策に従って果たしてきた表と裏の役割を暴き出していくのであった。夢の話ということで、時代を自在に行き来しながら戦後日本の真の姿を描いていた本でありました。いつもながら、浅田氏の見事な筆力の本でした。

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