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2015年06月22日09:49

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読書紹介1418・「柳生平定記」 

●「柳生平定記」 多田容子著 集英社 06年版 1900円
 柳生十兵衛シリーズ第4弾。今回は、島原の乱のこと。十兵衛は里忍の手引で長崎のキリスタンの中に潜り込む。彼の任務は、キリスタンの撲滅である。しかしキリスタンの中に潜り込んだ十兵衛は、キリスト教に感化されてしまう。思いもかけない心の弱点が、十兵衛にはあったのだ。
 本書では、戦国の世で血を血で洗うように相争った人々が、「この世には神も仏もない」と絶望感を抱えていたことや、その中で柳生流兵法(切らず、取らず、勝たず、負けざる剣)によって、平和の世に生きる理が与えられることなどが語られていく。
 しかし、十兵衛はあくまで隠密であった。長崎のキリスタンを蜂起させるため、圧政をひいている代官を皆の目の前で一刀両断にするのだ。こうして、キリスタンの蜂起が始まった。長崎での任務を終えた十兵衛は、全国で同士を募ると称して各地に飛んで行った。
 そこで十兵衛がやったことは、全国の不平浪人を集めることであった。柳生流の無刀取りで浪人たちを心服させ、各地で道場を設け弟子にしていった。その数は1000人が目標であった。こうして、幕府に不平を持ち争乱に馳せ参じようとする浪人たちが、十兵衛に誓紙を出し(自分が善であっても悪であっても、殺しはしない)て柳生流の極意を十兵衛自ら教示されるのだった。
 やがて、圧政に苦しむキリスタンによって島原の乱が勃発する。これに対し幕府は諸大名の討伐軍を先兵にし、老中・松平伊豆守信綱を総大将とする幕府軍を送り込み壊滅させたのである。その際、各地の不平浪人が馳せ参じることはなかったのであった。1000人を無刀取りの技で心服させた十兵衛の教示ぶりは、絶妙なものであった。そのため、弟子の数はみるみる増え1万人を超えていくのであった。
 一方、柳生家に恨みを抱く「はぐれ忍者たち」が、十兵衛を狙っていた。十兵衛は彼らによって、毒の穴(水が溜っている)に誘き寄せられた。その毒に身体を痺れさせられてしまった。その毒によって、十兵衛の身体の神経はズタズタに切られてしまうのだ。
 危ないところを、仲間に助けられた十兵衛。しかし、生き延びることはできたが、足で立つこともできなかった。ここで本書は、人間の神経の再生がどのように行われるかを描写していく。十兵衛は、まったく新しい神経を作り上げていくのだ。
 こうして江戸に戻った十兵衛は、家光から隠密業を辞め再出仕するよう命ぜられる。十兵衛32歳、御書院番という役であった。この役をやりながら、全国の道場に教示に出かける十兵衛。生涯で1万3000余人の門人を育て、44歳で没したのでありました。

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