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2015年04月26日09:28

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読書紹介1395・「鹿の王 下ーー還って行く者」 

●「鹿の王 下ーー還って行く者」 上橋菜穂子著 角川書店 14年版 1600円
 上橋氏の本は「獣の奏者」以来、3年ぶりに読んだ。本書は、昨年に図書館にリクエストして、やっと届いた本。但し下巻が先にきた。上巻はまだ、30人以上の待機者がいる。上巻を待っていたら、あと半年待たなければならないので下巻から読んだ。
 本書の主人公は2人いた。1人は、帝国の辺境に住む氏族(鹿がトーテム)の長であったヴァン。2人は、帝国の属国・アカファ国の医術師ホッサルである。辺境の氏族たちは、帝国の支配に抗して戦うが、敗れていく。ヴァンの氏族は敗れてバラバラになる。ヴァンは、アカファ岩塩鉱の奴隷となる。
 ところで、帝国の支配に恨みをもって最後まで抵抗する氏族がいた。それは、馬をトーテムとする氏族だった。帝国の支配によって移住民が入り込み、氏族の地に疫病が発生する。環境の変化によって、もともとあった病原菌の病変がおこったのだ。そのため、アカファ国が壊滅的な被害を蒙る。病変によっても、辺境の氏族には疫病の被害は最小だったことから、この病は帝国とアカファに下した神の「罰」だと信じられた。
 しかし、馬のトーテムの氏族の犬に疫病が感染しこの犬に異変がおこった。脳に感染し、犬が賢く強くなったことと、新たな感染源に犬(キンマの犬)がなったことだ。氏族の指導者はこの犬を使って、帝国とアカファ国に報復を開始する。
 アカファ岩塩鉱がキンマの犬に襲われた。ヴァンはキンマの犬に咬まれ、瀕死の重傷を負う。しかし、岩塩鉱の住民の中で1人だけ生き残るのだ。そればかりではなく、ヴァンの身体に異変がおこる。嗅覚が異常に発達し、キンマの犬を操れるように(キンマの犬と一体になって)なるのだ。そのことによって、ヴァンを我がものにしようとする4つの勢力によって、ヴァンの争奪戦が繰り広げられるようになる。
 本書では、ホッサルによって疫病の原因追求とその特効薬の開発が試みられる。そこには、人間の体内にある細菌が人間を活かしもすれば滅ぼしもすること。人とは、それらの共存状態の中にある存在であることが解明される。
 本書は、ヴァンにそのような共存という生き方を選ばせていく物語になっている。人間の「生と死」とは何か? を問いかけてくれる物語。本年度の「本屋大賞」を獲った本。良い本でした。

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