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2015年10月18日09:31

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読書紹介1454・「朱温 上」

●「朱温 上」 仁木英之著 朝日新聞出版 09年版 900円
 本書の主人公の朱温とは、唐(618〜907)が滅んだ後の五代(唐と宋との間に華北に興亡した5つの王朝。907〜960)の最初の王朝・後梁(都は洛陽。907〜923)を興した人物である。
 上巻では、幼い時に読書人である父が死に、残された家族全員が富農の奴僕となり辱めを受けるようになる。そんな中、朱温だけは農作業をさぼり山中に隠棲していた李我のもとで棒術と兵法を習っていた。やがて、唐朝が衰える中で民衆蜂起の気運が高まるなか、李我に紹介されて朱温は闇塩商のもとで働くことに。
 李我の紹介ということで、闇塩商に厚遇された朱温だったが、彼は率先して力仕事の塩運びに汗を流した。その作業をしている者たちは強力ぞろいで、そんな朱温を暖かく迎え入れたのだ。
 ということで、やがて闇塩商の1人である黄巣が先陣となり、唐朝に対する蜂起が起きる。朱温は、強力たちを組織して黄巣軍に加わったのだ。朱温の思いは、自分が富貴を得て家族(大好きな姉や次兄)を幸せにすることであった。しかし、戦いの合間に故郷に立ち寄った朱温は、姉が部落の男たち全員の慰め者となって身体を腐らせ死んだことを知る。
 怒りを力にすることを李我から教わっていた朱温は、その怒りをバネに黄巣軍の中で頭角を現していくのだ。やがて次兄も朱温軍に加わり活躍するが、戦死してしまう。朱温の中で、何かが崩れ落ちてしまうのだった。
 黄巣軍は、戦いの中で百万にまで膨らんだ軍勢が3千にまで減ったこともある。しかし、王朝の腐敗と民の窮乏は、いくらでも怒りの捌け口を探していて、兵卒も人材も、瞬く間に黄巣軍に集まってきたのだ。こうして、唐の都・長安を陥落させた黄巣軍だったが、都を獲られたくらいで300年近く続いた唐朝が崩壊することはなかったのだ。
 やがて、都周辺の各節度使に攻められ都落ちした黄巣も死ぬ。そんな攻防の中で、愛する者を失った朱温は、次第に権力欲に取り憑かれていく。黄巣軍内の権力争いで味方に裏切られた朱温は、官軍に迎え入れられ黄巣軍追撃の軍団となり、大梁を中心に勢力を拡大していくのでありました。

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