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2015年06月27日08:41

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読書紹介1420・「やみとり屋」

●「やみとり屋」 多田容子著 講談社 01年版 1700円
 「言部流」舌法というのが、本書のテーマ。時は5代将軍綱吉の時代。「生類憐みの令」が支配的な時世であった。主人公の春之介は、ヤミで「鳥肉」を喰わせる店を開いている。時代へのちょっとした反逆である。そこに集まる者には、踏み絵をさせる。絵は犬であった。やみとり屋では、春之介が集まった浪人や町人たちに「言部流」の舌法を教えている。太平の時代、剣で人を斬るのではなく言葉で人を切る術を教えているのだ。
 舌法には、「振舞いの術」とか「場の心得」「間の心得」「声音の術」「面要の術」等々。ここで、「突っ込みの術」のことがでてくる。漫才の「ボケと突っ込み」である。春之介は「呆けの術」のボケで、相棒の万七が突っ込みであった。この2人が、やみとり屋を運営していたのだ。
 ということで、不平不満を抱える浪人や町人が2人の試験を受けて、やみとり屋の客となることが許され、鳥肉を喰らうと共に舌法の修練を積んでいくのだ。やがて、常連の浪人たちは「不平不満」から「世直し」へと話を膨らませていく。そこで、上方で流行っていたお伊勢参りに乗じて、「天皇の隠し子・由香利君」なるものをでっち上げ事を起こそう、ということになっていった。常連客の一部が、そのために上方に渡って行ったのである。やがて、やみとり屋は目付による取締が・・・、という物語。
 本書では、春之介が捨て子だったこと。大阪城代の松平出雲守に拾われ、潮屋という商家に養子に入れられたこと。潮屋を飛び出し、江戸に渡ったことなどが語られる。こうして「やみとり屋」のことは、目付及び目付までも監視する隠し目付までもが目を付けることになる。様々な人々のシガラミを描きながら、「やみとり屋」消滅の姿が描かれていくのでありました。

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