mixiユーザー(id:2810648)

2023年10月29日09:20

51 view

読書紹介2340●「冷酷な丘」

●「冷酷な丘」 C・j・ボックス著 講談社文庫 17年版 1100円
 猟区管理官シリーズ10。本書では、2つのことが並行してすすむ。1つは、ジョーの義父が風力発電事業に乗り出した途端、何者かに殺されタービンに吊るされる。2つは、鷹匠の盟友ネイルの隠れ家がロケット弾で爆破され、ネイルの恋人アリーシャが木っ端微塵となる。
 義父アールは大富豪の開発業者で、シリーズ5(「裁きの曠野」)の牧場を買い取っていた。そのアールと結婚(5人目の夫)したのが、ジョーの妻メアリーベスの母ミッシーだった。ミッシーは前夫バトとの結婚前の契約書で、離婚したらバトの牧場を譲り受けることになっていた。
 常に高みを望み、そのためには冷酷になれるミッシーは、ワイオミングにやって来たアールに色目を使っていた。それを知らなかったのはバドだけで、住民の誰でもが知っていて不快に思っていたのだ。
 アールが買収した牧場と隣接していたバドの牧場が合わされ、郡最大の広大な牧場が出現した。そこにアールが導入したのは、政府が奨励する風力発電の巨大な風車であった。アールは100基の建設を企て、そのためにミッシーの財産(牧場)も抵当に組み込んだ。いまだ10基も完成(実働は4基)していない最中、アールは殺された。
 逮捕されたのはミッシーだった。ミッシーの車の中には犯行に使われた銃があり、検察はたれ込みにより確たる証拠があると確信していた。愚鈍な保安官はミッシー以外の犯人を想定せず、その可能性を調べようともしない。
 いっぽうネイルは、ロケットランチャーを発射させた2人の男を追跡する。現場に残されたビール缶の指紋とDMAから男たちが特定された。その杜撰なやりかたは素人の仕事だった。ネイトを狙う〈ザ・ファイブ〉(ネイトが属していた政府の特殊部隊)の仕業ではない。2人を雇ったのは、シリーズ8(「ゼロ以下の死」)でネイルに殺されたギャングの未亡人ローリーだった。しかしそのローリーに、ネイトの隠れ家の情報を知らせロケットランチャーを与えた者がいた。
 ジョーの調査は、アールの経歴を洗うことから始められた。ジョーはアールが実際にはなにも造らず、政府の補助金を掠め取る合法的詐欺師であることを知る。そうやって、富を築きあげてきたのだ。アールの情報網には、上院議員からギャングまでが組み込まれていて、アールを恨んでいる者は無数にいることを知る。
 やがて、ネイルが追跡する男とジョーが追う男(ミッシーが犯人とたれ込んだ男)が1つに結びつき、1年ぶりにジョーとネイルは再会する。
 ネイルにとってジョーとメアリーベスの2人は、社会的道徳観といった世界との、ネイルの唯一の本物の接点だった。理解できればと願い、彼にとって、いまだそれは異国のものだ。ネイルは2人を保護し、守り、遠避けておきたかった。
 ネイルはその想いをジョーに伝える。「ジョーを尊敬している」と。法の埒外に自らの正義を貫くネイルに、法を遵守(猟区管理官になる時に宣誓した)するジョーは、ここに和解するのであった。
 ミッシーの裁判が始まる。その法廷で大どんでん返しが起こる。ミッシーは無罪となるのだ。そのため、ジョーは真実を妻にも隠しておかなければならないハメに・・・。という物語。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年10月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031