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2023年02月04日09:35

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読書紹介2266●「動機探偵」

●「動機探偵」 喜多喜久著 双葉文庫 20年版 650円
 主人公の若葉(24)は、求人広告のあった池袋の令王大学の事務員の面接に赴いた。応対にでたのは、人工知能研究の天才研究者・名村准教授(30代後半)だった。彼は人工知能の改良のために、たくさんの「なぜ?」を集めたいと言う。それは、人工知能に「人間らしさ」を備えさせる研究だった。
 名村は、「人間らしさ」とは「非論理性」であり、その「非論理性を作り出す心理」を解析し、それを人工知能に取り込む研究をしていたのだ。こうして若葉にその「なぜ?」と感じられるような謎を、特任助手として集めさせるのが仕事内容であった。
 ところで、そんな名村の表情に若葉は違和感を覚える。表情のタイミングがズレているのだ。やがて、名村には「喜怒哀楽」の感情が欠落していることが告げられる。表情は学習によって後づけで作られていたのだが、それはほぼ完璧に近く、日常生活で気づかれることはなかった。名村は、完璧に人間らしく振る舞う人工知能を完成させたら、自分も人間らしい感情を手に入れられるのではと、それを目標に研究に取り組んでいたのである。
 本書では、4つの謎の解析が行われる。謎の収集(学内の掲示板、SNS等での募集、新聞広告など)は若葉が、調査内容の指示と仮説(非論理的な心理の)は名村が行うことに。
 第3話「西脇由香里は、なぜ婚約破棄したのか?」では、名村が直接調査に現場まで乗り込んでいる。それは、「ある感情の欠落」が原因では? との名村の仮説が、自分の喜怒哀楽の欠落と同じ原因ではと思ったからである。
 ということで、本書には人間の不可解な心理の謎が解析されていく。本書は、ミステリーの形をとっているが、犯人探しなどはない。あくまでも、人間の心理というミステリーを解き明かす小説でありました。

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