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2018年07月25日12:58

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読書紹介1745●「月光のスティグマ」

●「月光のスティグマ」 中山七里著 新潮社 14年版 1600円
 本書は、中3の主人公・淳平と隣家で幼馴染の一卵性双生児の妹が、関西淡路大震災で親を失いバラバラになった後、成人して東京で再会する物語。
 大震災で生き残ったのは、淳平(両親と兄は死亡)と双子の妹・優衣(母と姉は死亡)だけだった。優衣をがガレキの中から助けたのは、淳平だった。15年後、「優衣を護りたい」から「人を護りたい」との思いで検事となっていた淳平は、保守党の青年部長の是枝議員の内偵を指示される。是枝議員は「震災遺児育英会」の理事をしていて、この育英会の資金が政界工作の資金に使われている疑惑が浮上したのだ。
 早々、育英会にボランティアとして潜入した淳平の前に、是枝議員の私設秘書をしている優衣が現れた。是枝に心酔する優衣と、育英会を食い物にしている是枝を許すことができない淳平は、愛し合いながらも対立し駆け引きを繰り返す。
 やがて3.11の大震災に遭遇した2人は、是枝議員と共に福島の被災地に向かう。ここでは、2人が関西であじわった大震災の子どもの時に受けた心の傷が、今でも癒えていなかったことが判明する。3.11後、「震災育英会」は全国から億単位の義捐金を受け取るようになる。
 やがて育英会は、「震災と戦災孤児育英会」と名称を変え、世界中の孤児を対象にした活動を展開するが、それは会の金の流れを海外のアルジェリアに移して、日本の検察の追及を逃れる手段にしかすぎなかった。
 アルジェリアに向かう優衣の後ををつけて行った淳平は、そこで証拠物件を掴む。ところが、帰りの空港はテロリストにジャックされ閉鎖。日本大使館に逃げ込んだ淳平と優衣を待っていたのは、大使館に突入し日本人を人質にとったイスラム過激派だった・・・。
 2度にわたる震災とテロのために人質となった淳平と優衣の前には、悲しい別れが待っていたのだ。

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