●「武士マチムラ」 今野敏著 集英社 17年版 1600円
幕末から明治にかけて手(ティー・あとの沖縄空手)の名人・マチムラ興作の生涯を描いた本。幕末、手の稽古は人目を避け、夜間にやるものだった。それは、薩摩に武器を取り上げられた琉球人の護身の技で、「一子相伝、門外不出」と云われていた。手の稽古は、一度始めたら途中でやめることは許されなかった。
本書では、15歳から手の稽古(最初は父親が指導)を始めた興作が、優れた師に恵まれ上達していき、薩摩の侍の横暴(娘をさらって妾にしたり)に素手で挑んで、相手の刀を取り上げたことから、故郷を逃亡せざるをえなくなったこと。幾多の苦難を乗り越え、名人と云われるようになったこと。
やがて明治となり、琉球国は沖縄県となり、王国が消滅。興作は頑固党(清国の援助で琉球の独立をめざす)の党員となり、その党員の心身を鍛えるため「手」の普及に尽力するのだ。
本書では、琉球がもともと清国の冊封(さくほう)を受けた独立国だったことそれを、薩摩の武力で隷属させられたこと。やがて明治政府に、王国そのものが消滅させられ、日本に隷属させられたこと。この過酷な隷属状態から脱しようと、琉球独立運動に参加したことが描かれているが、その姿は昨今の沖縄の姿に重なるもので、日本政府がこれまでのように沖縄への抑圧を続けるならば、沖縄人が「沖縄独立」をめざしてもおかしくない、と思わされたのでした。
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