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2022年12月04日12:43

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読書紹介2248●「香君ーー下・遥かな道」

●「香君ーー下・遥かな道」 上橋菜穂子著 文芸春秋 22年版 1700円
 帝国から不当な扱いを受けたオゴグ藩王国は、密かにオアレ稲の改良を行っていた。それは、海辺では育たないといわれたオアレ稲の零れた種から、天然に近い稲が島の中に生えたからだ。最初は食べられるものではなかったが、肥料の改良が行われ、オアレ稲より丈夫で米粒の多い「救いの稲」ができた。しかも、「救いの稲」はオオヨネ虫にも強かったのだ。
 帝国は、「救いの稲」の存在に狂喜する。オゴグ藩王国へのこれまでの扱いを謝罪し、「救いの稲」を帝国全土に普及することに。しかしアイシャは、「救いの稲」のあげる声に恐怖を覚えるのだ。
 やがて、渓谷にある異界の扉が開いた。そこから飛来したのは、オオヨネの天敵である「天炉のバッタ」であった。「天炉のバッタ」は、オオヨネを喰らうと産卵し、その卵は5日でバッタとなった。幼いバッタは、「救いの稲」も周辺の草花も喰らい尽くした。そして成長すると、再びオオヨネを喰らい産卵する。
 瞬く間に、北方の渓谷から西カンタル藩王国全土が「天炉のバッタ」によって食い荒らされた。そして、「救いの稲」の栽培地に沿って「天炉のバッタ」は帝国に向かって行く。その数は、何十億とも知れぬ数であった。
 アイシャは、「天炉のバッタ」が短命なのに気付いた。彼らの餌であるオオヨネ(つまり「救いの稲」)が無くなれば絶滅させられるのだ。こうして、帝国全土の「救いの稲」を焼却するか否かの議論の場が、香君オリエによって作られた。
 しかしオリエは、毒を盛られ会場で倒れる。オリエから香君の腕輪を取り、自らの腕に嵌めたアイシャは、自分が「香君である」と名乗りをあげる。そして、「万象を知る」能力を皆の前で披露して見せた・・・。
 本書は、植物に関わる物語である。植物がコミュニケーションの手段として「香り」を放っていること。それが、他の植物や昆虫、微生物、小動物、そして人間にも影響を及ぼしていること。本書は、このアレカパシーと呼ばれる現象を小説化したのだ。
 そんな植物と昆虫の不思議を、本書は明らかにしてくれたのでありました。

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