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2020年09月14日10:49

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読書紹介1967●「任侠学園」

●「任侠学園」 今野敏著 中公文庫 12年版 667円
 任侠シリーズの2。主人公の日村は、「阿岐本組」の代貸である。組はちっぽけながら独立独歩、任侠と人情を重んじる正統派ヤクザ。そんな組を率いる阿岐本雄造は、文化的事業に目がないところが困りもの。
 今日引き受けてきたのは、潰れかかった私立高校の運営だった。阿岐本が理事長に、日村は理事になって学園に赴くと、学園は荒廃していた。壁にはスプレーで落書きが、校舎の窓ガラスは割られ、グランドはヒビが入っているありさま。無気力な教師と、やりたい放題の生徒。
 阿岐本は、「『割れ窓理論』だよ、1つ1つちいさなことからやっていかなきゃならねえ」ということで、日村は花壇の修復と窓ガラスの修理を業者に手配する。ところが夜半に生徒が忍びこみ、窓ガラスを割っている現場を捕えた日村は、3人に本気の説教を。大人の本気に初めて遭遇した3人は、日村に信頼を寄せるようになる。
 この3人がきっかけとなり、学校中が掃除されるようになる。それには教師も参加し、生徒たちの「掃除当番」まで組まれるようになり、みるみる学園は再生していく。やがて、部活動を再開しようとハリキル教員たちの前に、学園に多額の寄付をしている父兄から待ったが。
 この父兄は組織暴力団のフロント企業の社長で、「部活動はまかりならん」と恫喝する。なにやら自分の過去にあったようだ。彼は、背後の暴力団の名をちらつかせるのだ。ということで、阿岐本と日村は有名な暴力団の事務所に連れていかれ・・・、という物語。
 アウトローではない、本物の任侠ヤクザが「素人衆に信用されてこそ、一人前」と、本気でもって素人に体当たりする姿が感動を呼ぶ。学校が嫌でドロップアウトしたヤクザの日村が、学校法人の理事として教育現場で任務にいそしむというミスマッチが、なんとも愉快な小説でした。

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