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2019年03月09日11:21

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読書紹介1803●「縄文探検隊の記録」

●「縄文探検隊の記録」 夢枕獏or岡村道雄著 集英社 18年版 860円
 13.000年も続いた縄文時代。縄文人とは、毎日をポジティブに暮らす「生き方の達人」だった。労働時間は1日4時間、狩りや採集は労働というより楽しみでもあった。税というものがなかった時代、海のもの山のものまで様々なものを食した。飢えはもちろん、飢餓というものを経験しなかった。一説によれば、農耕を始めた弥生人以降の人間よりも頭が大きく、個人的能力は優れていた。自然・環境をよく観察し、どう身を処すれば良いかを理解していた。こうした縄文人の暮らしの痕跡は、つい最近、昭和30年代まで各地の農村に残されていた。
 新石器時代の始まりは、縄文時代の始まりとなった。地球が温暖化し、一気に様々な樹木も繁殖していった。縄文人が多く食べたものにクリ(主食ではない)がある。定住生活を始めた縄文人の集落の周りには、クリ林があった。ウルシの木も植えられている。クリやウルシの林は、管理(栽培)されたのだ。そしてクリの木は、建材として燃料として、細工物としておおいに利用された。定住できたということは、冬場をしのぐだけの食糧を秋までに確保できたからである。それには、川を遡上するサケがおおいに利用された。
 縄文中期後半から後期にかけて、3度ほどおおきな寒冷期があった。人口減少の動因の1つであったが、人口減少の理由はそれだけではなかった。定住によって集落が大型化したことによって、階層や格差のような矛盾(政治的な)が始まったのだ。狩猟採集社会の平等や協業、和が維持できなくなった。集落も巨大化して、ゴミや糞尿の浄化が自然の処理能力を超え、生活環境が劣悪になったことも嫌って、人々は分散していった。
 ウルシ遺跡は、9.000年前のものが(世界最古)北海道(垣島B遺跡)で出土した。日本のウルシ製品は独自の発展を縄文時代に遂げていたのだ。エルシの木は、人手をかけなければ消滅してしまう木だったからだ。ウルシは装飾品だけでなく、接着剤(鏃を木に固く接着する)としても貴重なものであった。
 縄文人は、「世界のいたるところに神が存在する」という物語をつくった。よこしまな感情を封じ、感謝と尊敬を選択したことが、1万年におよぶユートピア社会をつくったのだ。この神を、空海(空海の時代には、東北に蝦夷という縄文人がいた)は「草木国土悉皆成仏」(あらゆるところに仏がいる)という言葉で表した。神が未の統合を図ったともいえる。
 神というのは、生きるためのソフトウェアだった。死というものを安心して受け止めるためのシステムを作り、人間社会を機能させたのである。これは、どの世界の神にも共通するものであったのだ。

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