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2023年07月27日14:15

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読書紹介2315●「許されざる者」

●「許されざる者」 レイフ・GW・ペーション著 創元推理文庫 18年版 1300円
 時は2010年7月のスウェーデン。主人公のラーシュ(67)は、大好きな屋台のホットドックを食べようとした直後に倒れた。脳血栓である。一命を取り留めたが、右手右足に障害を残した。入院中、ラーシュが国家犯罪捜査局の元長官だったと気づいた主治医・ウルリカは、1年前に亡くなった父で牧師のことを相談する。それは、25年前に殺された9歳の女の子「ヤスミン殺人事件」のことだった。
 ある人物の懺悔を告解室で聞き(守秘義務がある)、そのことで父がずっと心を痛めていたというのだ。25年前の6月にヤスミン事件は起こった。許されざる小児性愛者による殺人である。大量の人員を投入して捜査が行われたが、7月にスウェーデン首相暗殺事件が勃発。ヤスミン事件は、中途半端に迷宮入りされられたのだ。首相暗殺事件を受け、重大事件の時効廃止法が今年の7月に成立。しかしヤスミン事件は、6月に時効が成立してしまった。
 本書は、「時効成立の事件の犯人をいかに裁くか」というテーマを扱っている。ラーシュは、「次の角の向こうを見通す」といわれる超人的警官だった。退職して3年、いまでも警官たちは彼のことを「長官」と親しみを込めて呼ぶ。ラーシュは主治医に、「牧師の死亡3年前からの遺品を調べろ」と指示。自宅に戻ったラーシュには、妻(銀行の副頭取で20歳下)から介護士・マティルダが付けられた。又、長兄(80)からは従者として長兄の農場で働くマックス(23)が付けられる。ラーシュ一族は大富豪だった。
 ラーシュの元に、秘密の捜査員が集められる。義弟のアルフ、警察学校からの親友・ボー、マティルダとマックスである。やがて、主治医からヤスミンの髪飾りと思われる遺品が届く。これらのことから、懺悔した人物が特定される。それは、当時すでに高齢のオペラ歌手の女性(既に死亡)だった。義弟アルフ(元国税局職員)の綿密な財産調査と関係人物の履歴が調査される。又、警察に保管されている証拠物件と捜査資料がラーシュのもとに届く。こうして、1カ月で犯人が特定されたのだ。
 ところでこの小説は、一種の「安楽椅子探偵」物語である。主人公は後遺症のため、常に頭痛がして胸の圧迫感のせいで呼吸が苦しいのだ。だから直接の捜査は、主にラーシュの秘密の捜査員が行っているのだ。犯人に面談したラーシュは、選択を迫る。時効が成立したが、「本来の罪(ヤスミン殺しで懲役20年)と同等の罪を自白して、刑に服する」というもの。しかしその直後に、ラーシュの見に思わぬ出来事が・・・。という小説。
 本書では、「小児性愛者を狙った殺人事件(私刑)」が、アメリカでは2009年に300件以上起こっていると、FBIが発表していること。それに対しスウェーデンでは、小児性愛者が起訴されたのがたった3件に過ぎないことが描かれていたのでありました。

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