●「悪徳の輪舞曲(ロンド)」 中山七里著 講談社 18年版 1600円
御子柴礼司シリーズの第4弾。今回は、御子柴の母が再婚した夫(75)を自殺に見せかけ殺したと逮捕されたのだ。唯一の物的証拠は、首を絞めたロープに、母・郁美の皮膚片がついていたこと。また梁に滑車の痕があり、おの滑車が家で見つけられていた。
弁護の依頼は、30年前に別れたままの妹・梓から。御子柴は、郁美も梓も「親でも妹でもない」として、「高額な金さえ払えば受ける」と引き受けたのであった。こうして、14歳で殺人を犯した自分の事件の後、自分の家族が辿った過酷な足跡を福岡、大阪、関東へと追跡した御子柴であった。
そんな中、御子柴は2人に再会してからというもの、どうにも変調を来していた。2人や2人と関わった者たちの証言を聞いていると、頭の中で沸騰と冷却が反復される。かっとなったり、急に冷めたりしまうのだ。危険な徴候だった。御子柴の武器は1にも2にも冷徹さだからであった。
被害者である郁美の再婚相手は資産家であった。その成沢の過去を辿ると、5年前の「池袋通り魔事件」で、最愛の妻を惨殺されていた。成沢と郁美は、2年前に結婚相談所で知り合い結婚。この2年間、仲睦まじく暮らしていたとの、近所の証言を得ていた。
やがて、30年前の事件の後に御子柴の父が自殺した事件が蒸し返される。今回の再婚者の自殺と瓜二つだったのだ。「この母にして、この子(14歳で幼児を殺した御子柴)あり」なのかと、御子柴は自分の出生について悩むことに。
裁判となり、御子柴は殺害現場の復元作業を法廷の場で行う。その再現は、「氏家鑑定所」という民間の機関で行われた。そこで現れた真実は・・・。最後のどんでん返しが、実に見事でありました。
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