●「罪責ーー潜入捜査4」 今野敏著 実業之日本社 09年 857円
小学校に不法投棄された注射針などの医療廃棄物。子供がB型肝炎に感染した。廃物回収業者を責任追及する教師に、ヤクザが立ちはだかった。「家族がどうなってもいいのか」という脅しも。やがて、教師の長男が交通事故に。長女の女子高生が監禁・強姦され、教師自身もドスを刺されて亡くなった。佐伯の怒りが爆発、ヤクザ狩りの殲滅戦が始まるのだ・・・。という物語。
本書では、著者の日本人論が展開される。それは、「日本人は、あらゆるものをシンボル化」するというもの。保守政党や暴力団は、「日本民族は単一民族」というシンボル化をおこなっていること。その結果、政治すらシンボル化され、日本人は「名君に支配されることを望んでいる」「政治を運営するのはあくまでもお上だ」という考え方で、政治腐敗を正すのも「民衆の心をよく理解する名君」という幻想から、いまだに脱却できずにいる、というもの。
著者は、日本人の源流が北からはモンゴロイドが、南からはミクロネシアなど多民族の集合体であること。従って、上代にはそれぞれの民族が日本の先住民族となって存在し、そのそれぞれの民族を支配する家があった、ということが語られていく。
ということで、そんな日本人論をまじえながら、日本の政治の現実をも描いている本なのでありました。
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