●「蓬莱」 今野敏著 講談社文庫 97年版 657円
ゲームソフト「蓬莱」を開発した渡瀬の会社は、パソコン版に続きスーパーファミコン版を計画した。しかしそれが、暴力団による「販売中止」の恫喝に晒される。バーで酒を飲んでいた渡瀬は、外に呼び出されて散々の目にあうのだ。翌日、会社に出社した渡瀬は、「蓬莱」のプログラマー大木が、駅のホームから落ちて死んだことを知らされる。
さらに、「蓬莱」の製造工場が原因不明の事故で生産がストップする。これが、暴力団の恫喝であることは明らかだった。なぜ「蓬莱」の販売を中止しなければならないのか。暴力団の意図がまったくわからなかった。
やがて、大木の死が事故ではなく事件だと考える刑事が、渡瀬と一緒になって事件の追及を始める。そこで浮かび上がったのは、右翼の政治結社とその後ろ盾の保守党の若手(50代)政治家の姿だった。
本書は、蓬莱でわかるとおり、紀元前3世紀に「蓬莱島」に不老不死の仙薬を探しに行くと始皇帝を騙して、童男女3000人と百工を連れて中国を脱出した徐福が、蓬莱島=日本にやって来て、原日本人(縄文人以降の)を形成したという奇説を基にしてつくられている。
徐福が、征服ではなく習合・和合をもとにして縄文人と融合したこと。それが、出雲族や、隼人族などの原日本人となったこと。徐福のセットしたプログラムが、その後の日本を形作ったという訳。 1つの原日本人説として、楽しめる物語でありました。
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