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2018年01月09日13:08

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読書紹介1697・「ギリシア人が来た道」

●「ギリシア人が来た道」 トマス・ケイヒル著 青土社 05年版 2800円
 最近のTVドラマ「相棒」で、「正義」に絶望した10代の青年に主人公がかけた言葉が印象的だった。人間の人工物である「正義」という木の根は、まだしっかり根を張るに至ってはいない。しかし1人々々の努力によって、根を張っていくようにすることが必要なのだ、と。
 本書には、ソクラテス(紀元前5世紀、釈迦や孔子と同時代人)が興したギリシア哲学で、絶対的な「真実」「善」「正義」という人間の人工物を造るに至った様子が描かれている。それに先立ち、ホメロスの「イリアス」の時代では、人が運命によって生き、神と人間が混存する「戦士」(戦争と暴力)を描いていること。いち早くアルファベットの20数文字を取り入れ、市民の誰もが読み書きができるようになったことが、人類史上最初に民主政がとりいれられた原因になったこと。ギリシア悲劇・喜劇の誕生が、神ではなく人間の本質を明らかにしてきたこと。それが、ギリシア哲学誕生を準備したということが描かれている。
 翻って、戦争放棄の憲法9条は非現実的だという絶望の声に、確かに戦争放棄(「不戦条約」として1928年列強諸国等63ヵ国が締結)は人間が造った人工物で、わずか90年前に植えられた木だが、不断の努力で根を張り巡らせなければならないものなのだと、訴え続けなければならないと思ったのでした。

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