●「神狩り」 山田正紀著 角川文庫 77年版 300円
山田氏のデビュー作。ここでいう「神」とは、人間を愛していない、人間に対して持っているのは悪意と嘲弄だけであること。本書では、神が人間の上にいなければ、人間はもっと善良にももっと幸福にもなれるのだ、ということがテーマになっている。そして、神に挑む(神狩りの)人々のことが描かれることとなる。
物語は、ある石室で「古代文字」を見つけた情報工学の若き天才(主人公の島津)が、その解読の結果「神によって書かれたものとしかいいようがない」と結論する。神は、その「秘密の文章」らしきものを世界の各地に、昔から人間への生き餌としてばら撒いている節があった。やがて、NASAが火星の表面に「古代文字」とそっくりの模様(神が描いた)を発見する。しかし、人類が火星に到達しようとする試みは全て失敗するのだ。
アメリカの神狩りチームは、島津を米軍基地に誘拐し、古代文字の解析のために連想コンピューターを与えるが、解析は失敗に終わる。その直後、この基地が神の力で壊滅させられるのだった。その後、島津は日本の神狩りチームに迎え入れられ、神との対決を決意するのだが、このグループのメンバーが次々と殺されていってしまう。という物語。
人類が火星に降り立つということ、それは人類が新しい種の時代に入ることとなる。という壮大なテーマが、著者のデビュー作だったのでありました。
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